第2章 『エルフ国編』

第1話 「魔王様、エルフ国に行く」

 魔族国を後にした私とアテナは、無事にエルフ族国へと入国していた。


 魔族とエルフ族はそれなりの国交があり、人族と違って敵対関係にあるわけではないので、別に国境警備などがあるわけではなく、あっさりとエルフ族領土へと入れていたのである。


 ちなみに、エルフ族には、二種類の種族が存在する。

 白エルフと黒エルフである。


 単純に肌の色の違いというだけなのだが、これはエルフ族にとっては致命的に価値観が分かれるらしく、清廉な純白こそが正当なエルフであるとする白エルフと、全てを包む闇色こそが正当なエルフであるとする黒エルフが、その価値観の違いから敵対関係となっていた。


 ちなみに、白や黒といっても、肌色に近い白と黒、である。


 部外者からすれば、白でも黒でもどっちでもいいのだが……当事者たちにとっては、まさに存在根幹を揺るがす重大なことらしく、どちらもが譲れない一線だったようである。


 魔族国としてはこれまで、白と黒、どちらの種族にも加担しないというスタンスだった。

 いうなれば、中立。

 夫婦喧嘩は犬も食わぬ……意味合いは少し違うが、そういうニュアンスということだ。


 あの馬鹿新魔王ブレアが変な欲を出して、その関係性を壊さなければいいのだが……


 白と黒のエルフ族は、その関係性こそ敵対しているものの、種として共通することも多々あったする。

 ……肌の色が違うだけなのだから、当然といえば当然ではあるが。

 長寿であり、美男美女揃いであり、やや長い耳の先端はとがっており、獣人族には劣るが身体能力も総じて高く、弓の扱いにも長け、中には魔法にも精通する者も多かったりする。


 そして何よりも、森の民とも呼ばれているエルフ族には、他の種族人間族にはない大きな特色があった。

 精霊を神聖化しているのだ。

 神と同列視しており、エルフ国においては精霊という存在は、恐れ敬い、崇め奉る尊い存在だった。


 ……だからなのだろう。

 整備されている街道で馬車を走らせるアテナが、唐突に言い放ってきた。



「クレア様。この国においては、私たちの関係を改めましょうか」

「……どういう意味だ?」

「私が主であり、クレア様はしもべ、ということにいたしましょう」

「いきなり暴論をブッこんできたな。理由を聞いてもいいか?」

「ここがエルフの国であるということを失念しているのですか?」



 当然とばかりな口調の彼女に、私はようやく理解が追い付いた。



「それで主従関係の逆転か。別にそんなことをしないでも、普通に仲間でいいんじゃないのか?」

「私が主です。これは譲れません」

「なぜ譲れないのか……意味がわからない」

「よいのですか? 私が大声で奴隷にされていると叫べば、クレア様はたちまちエルフ族にリンチされますよ?」

「……むう」



 魔族とエルフ族はそれなりの国交があるとはいえ、もろ手で良好というわけではなかった。

 精霊を神聖化するエルフとは違い、魔族は精霊を使役するだけの存在と位置付けているからだ。


 さすがに精霊への認識の違いだけで戦争に発展することはなかったが、一部のエルフには反感を抱かれていることも事実であり、精霊神聖化国であるエルフの国において精霊を堂々と使役していたら、アテナの言葉通りにフルボッコにされることだろう。



「……仮に私をしもべにしたとして。お前は私に何かをさせるつもりなのか?」

「そうですねぇ……手始めに、まずは靴を舐めてもらいましょうかね。主としもべの基本ですし」

「……私がお前に、そんなことを強制したことがあったか?」

「はい。いつも私の心の中では、されていました」

「被害妄想が甚だしい」

「──冗談はさておき。”あれ”はどういたしましょうか」



 馬車を走らせる街道の前方において、戦闘が展開されていた。

 まだ距離が離れていることもあり、そして戦闘中ということもあってか、私たちに気付いた様子はなく。

 とりあえず私は、一旦馬車を停止させた。



「あれは……白エルフと、レッサー・トレントか」



 私の指摘通り、まだ遠い前方の街道において、肌が白いエルフと樹木の魔獣が交戦状態となっていた。



「どうやら乱戦となっているようですね」

「……いやいや、ちょっと待て。なんだ、あのな戦い方は」



 私は思わずあんぐりとしてしまう。

 魔獣の集団と交戦しているエルフの集団が、あまりにも戦法だったからだ。


 剣と盾を装備するエルフ数人が連携もなしにバラバラに魔獣と戦い、弓を持つエルフ数人もが、こちらもまた連携もなしに無駄な射撃を繰り返していたのだ。

 戦術もなにもなく各々が勝手に攻撃しているようで、明らかな消耗戦であり、ただただ無意味でいて無駄に消耗するだけの、愚策ともいえる戦い方だった。



「あの部隊の指揮官は無能なのか?」



 魔王として軍を指揮していた私としては、あの部隊の指揮官はずぶの素人なんじゃないかとすら、思ってしまうほどであった。



「如何いたします? あれでは、エルフ側が全滅するのも時間の問題かと」

「んー……どうしたらいいと思う?」

「いつものクレア様ならば『ハッ! あんな雑魚共に構っている暇はない! 捨て置け!』と仰られるかと思うのですが」

「アテナよ……私がいつそんな暴君まがいなセリフを言ったのか、教えてほしいな?」



 アテナは肩をすくめるのみであり、私は嘆息ひとつ。



「まあ、助けてやるとするか。どうせ目的のない旅なんだ。暇つぶしと思えばどうということもない」

「なるほど。恩を着せて、その礼で金品等を要求するのですね。さすがです、クレア様」

「なぜ無意味に私を貶めるのか」



 そんなやりとりをしている間に、ついにエルフ陣営が劣勢となり始めていた。

 戦術もない稚拙な戦い方なのだから、当然といえば当然ではあった。

 負傷者も出始めたようで、エルフたちは下級魔獣に追い詰められていく。



「ほらほらクレア様。彼らを助ける気があるなら早く行かないと。冗談を仰られている間に、彼らが全滅してしまいますよ?」

「お前という奴は……まあ、いい」



 助けようと思った連中が助ける前に全滅してしまっては、知り合いではないので別に心は痛まないが、多少は寝覚めが悪くなるかもしれない。

 


「援護を頼むぞ。もちろん私じゃなく、エルフたちのだが」

「心得ております


 さすがにこれ以上は、アテナも揶揄してくることはなかった。




 ※ ※ ※




「ダメだ、これ以上は抑えきれない……っ」

「っう……、腕をやられた……っ」

「どうすればいいんだ……!?」

「ビトレイ! 早く指示をくれ!!」



 混迷を極めるエルフの集団は、樹木魔獣に押されていく。

 デタラメに振り回されるエルフたちの剣は効果を上げず、焦慮から照準が合わない弓矢はあらぬ方向へと飛んでいくのみであり。

 指揮官──ビトレイと呼ばれた気弱そうなエルフ青年は、おどおどした様子で右往左往。



「え、えっと……前衛はそのまま攻撃を──あ、いや、味方の援護を……」

「お兄ちゃん! しっかりしてよ! 指揮官でしょ!!?」



 勝ち気そうなエルフ少女は左に構える盾で魔獣の攻撃を防ぎなら、頼りない兄に叱咤を飛ばす。



「初陣で全滅とか、笑えないから!!」

「そ、そうはいっても僕は、望んで指揮官になったわけじゃ……」



 ぶつぶつ文句を呟くエルフ青年へと、一体の魔獣が襲い掛かっていく。



「ギギィーーーーーーーー!」


「うわ……っ」



 攻撃を避け損ねて、エルフ青年が尻もちをつく。

 その彼へと樹木の腕を叩き込もうとする魔獣を、疾駆しざまの私の斬撃が切り伏せていた。



「え……っ、ま、魔族……?」

「お前がこの部隊の指揮官だな?」

「い、一応そうだけど……」

「全滅したくなければ、いま一時的にでも私に指揮権を渡せ」

「え……っ」



 突然の展開に、エルフ青年が目を丸くする。

 まあ、当然の反応とも言えるだろうが。


 私が指揮官の移譲を告げる間にも、アテナが影術でもって何人ものエルフたちの援護に回っていた。



「影……あの精霊が?」

「あっちには魔族もいるぞ……っ」

「なんだなんだ……?」

「お兄ちゃん、どうする気なの……?」



 他のエルフたちもいきなりの事に当惑を隠せない様子で、魔獣と相対しながらも私と指揮官を注視してくる。

 エルフ青年は逡巡した後、やがて頷きを見せた。



「お願いします! あなたが誰か知りませんが、そう言ってくるってことは自信があるんですよねっ?」



 指揮官としては無能みたいだが、とりあず状況判断は出来るようである。



「指揮権は渡すので、魔獣を倒してください!」

「何を言っている? 敵の殲滅など後回しだぞ」

「え……?」

「ここまで戦線が崩壊していては、まずは生き残ることが最優先だ!」



 言いざまに横手から飛び掛かってきた魔獣を、蒼雷まとう剣にて一刀両断にする。

 そして戦場にいるエルフたちへと、指示を飛ばした。



「前衛は二人一組となり互いの背中を守れ! 組む者がいない者は後衛の援護に回れ! 後衛は距離をとってから、けん制射撃! 無理に狙おうとしなくていい、足止めだけで十分だ!」



 戸惑いを見せるエルフたちだったが、ようやく待ちに待った指示ということもあり、即座に行動を始める。



「今はアンタの指示に従ってあげる!」



 一匹の魔獣を切り裂いた私の傍らをすり抜けていった勝ち気なエルフ少女は、そのまま指揮官エルフの元へと走っていった。

 どうやら組む相手がいないようで、私の指示通り、後衛にいる指揮官エルフを援護に向かったようである。


 守りを固めるエルフ集団に、私とアテナが加わったのだ。

 エルフ側の被害は軽微となり、逆に魔獣の数は瞬く間に減っていき、ついには殲滅に至る。

 どうにか生き延びたエルフたちはその場にへなへなと座り込み、互いに生還できたことを喜んでいた。



「お疲れ様です、クレア様」

「……自分が情けなくなってくるよ。この程度の動きで、もう息が上がっている」

「歳ですから仕方ないですね」

「さすがに怒るぞ?」

「これは失礼を」



 アテナの慇懃無礼はもういつものことなので大して気にしないが、私は魔女から貰った指輪をちらりと見やる。



(魔力じゃなく体力にしてほしかったと思うのは、我が儘なんだろうか)



 魔力は大気に含まれているので取り込んでも誰にも害を与えることはないが、体力となってくると生者である他者から奪う形になるかもしれないので、そんな危ない代物は勘弁ではあったが。



「まあ、この指輪のおかげでお前への報酬魔力の負担が減るから、それはそれでありだけどな」

「何を仰っているのです? 指輪からの魔力とクレア様の魔力の”味”は違うので、指輪からの魔力などいりませんよ。願い下げです」

「まじか……」

「はい。きちんと、クレア様ご自身からの魔力を頂きます」

「グルメな奴め」

「珍味なクレア様が悪いのですよ」



 アテナといつも通りのやりとりを交わしていると、勝ち気少女を連れたエルフ青年が近寄ってくる。



「危ないところを、ありがとうございました」

「なんで魔族がここにいるのよ!」

「こら! マリエム! 恩人に対して失礼じゃないか!」

「だって……っ」



 叱られた少女エルフが面白くなさそうにぷいっと顔を背け、エルフ青年は頭を下げてきた。



「申し訳ありません」

「いや、別に気にするほどのことじゃない」

「──と言いつつ、内心では怒り狂っているクレア様であった」

「え……っ」

「おいおい、アテナよ。状況を見てふざけような?」



 驚きを見せたエルフ青年を前に、私は溜め息ひとつ。

 当のアテナはしれっとした態度で小首をかしげるのみで、反省の色がまるで見られない。



「えーっと……」

「ああ、すまない。アテナの悪ふざけだ。彼女が言ったことは気にしなくていい」

「そ、そうですか……」



 やや困惑しつつも、エルフ青年が居住まいを正してきた。



「僕の名はビトレイ。で、こっちが妹のマリエムです。改めまして、危ないところを助けて頂き、本当にありがとうございました」

「……こっちが名乗ったんだから、そっちも名乗ったら?」

「マリエム!」

「だって──」



 再び兄に叱責される妹。

 そんな兄妹を前に、私は隠す必要もないので答えた。



「私はクレアナード。こっちの精霊がアテナだ」

「精霊……じゃあクレアナードさんは、精霊使いなのですか?」

「……いや。アテナはその、仲間だ」

「おお……そうでしたか」

「え……そうだったんだ……」



 エルフ青年は納得したような顔になるも、エルフ少女は驚いた表情を見せる。



「魔族だから、てっきり精霊を使役してるもんだとばっかり……ごめんなさい!」



 さっきまでの悪態はどこへやら。

 エルフ少女は、ペコっと頭を下げてきた。



「精霊を道具のように使う魔族が嫌いだったから、それで失礼な態度をとりました! あの、本当にごめんなさい!」

「……ああ、そういうことか」



 私は納得する。

 精霊を使役する魔族に反感を抱くエルフは、少なからずいるのだ。

 だからこの少女エルフは、魔族である私を目の仇にしていたのだろう。

 しかしこうして自分の非を認めて謝罪してくることから、彼女の根は素直なのだろう。



「まあ、気にしてはいない。それにこうやって謝ってくれたのだし、とやかく言う気はないさ」

「クレアナードさん……」

「──と言いつつ、内心では怒り狂っているクレア様であった」

「……っ」

「アテナ。それはもういいから」



 顔を引きつらせるエルフ少女を前に、私は溜め息交じりだった。




 ※ ※ ※




 エルフの集団と別れた私たちは、彼らから道を聞いており、近くにあるドーペンという都市に向かっていた。

 聞く限りだと、このまま道なりに進んでいけば、1日ほどで着ける距離にあるらしかった。

 なぜこの都市に向かうかと言えば、この都市には冒険者ギルドがあると教えられたからである。


 ちなみに私は、先ほどのエルフの集団に事情を聴くことはしなかった。

 旅先で偶然知り合った者達の事情をいちいち聞いていては、キリがないからだ。

 旅は一期一会。

 縁があればまた出会うだろうし、なければもう二度と会うこともないだろう。


 それに、ひとつの予測としては、まだ新人指揮官が率いる、ただの街道警邏隊ということもあるのだ。

 だから私は、もう彼らを気にすることはしなかった。


 移動する馬車の中から外を眺めていた私は、ほぅっと息を吐いた。



「久しぶりに見たが、やはりデカいな」



 私の視線の先には、遠くにあるにも関わらず、その圧倒的な存在感を放っている大樹が悠然とその枝先を伸ばしていた。


 下手な小国程もある巨大樹の名は、世界樹『ガイア』。


 精霊信仰が厚いエルフ族国において、まさに象徴ともいえる存在だった。

 この世界樹そのものが精霊であるという考えから、一部のエルフには掛け値なしに神扱いをされているほどであり。

 この世界樹を維持管理する専用の村が、根本に造られているらしかった。


 以前、まだ私が魔王だった頃に、エルフ族国を表敬訪問した際、初めて世界樹を目の当たりにしたときは、本当に圧倒され、驚いたものだった。


 世界樹はその巨大性ゆえに内側が複雑な迷宮にもなっているようで、維持管理するエルフですら油断すれば迷うらしく、しかも樹木属性の魔獣を生み出す性質も備えているようで、魔族の私としてはそんな危ない代物、さっさと燃やしてしまえと思ったものである。


 白エルフ王とその話をした時などは、世界樹にとって魔獣とは腐敗物であり、人間だって腐敗物を出すだろう? と言われ、価値観が違いすぎると軽く引いた記憶があった。

 黒エルフ王も同様の見解だったが、少しだけ違う点があるとするならば、世界樹そのものを”制御”する方法を模索していた、ということくらいだろうか。


 現在、世界樹は白エルフの管轄下にあるので、その管轄権を巡っても白と黒のエルフ族は対立しており、畏敬訪問した私に白からは専守・黒からは奪還の協力をしてほしいと、願われたものだった。

 もちろん、どちらの種族にも協力することはなかったが。



「そういえば、ひと月……くらい前だったか? エルフ族国を襲った地震で、世界樹内で新たな道が見つかったと聞いたっけな」

「ですね。しかもその新たな道の先には、世界樹の”核”と思しき物が見つかったとして、エルフ族が騒然となったと聞き及んでおります」

「暇があれば、観光がてら行ってみるのも面白いかもな」

「暇などいくらでもありましょう。我々には、目的などないのですから」

「ふっ、確かにな」



 暇を持て余す私とアテナは、そのまま馬車を走らせる──




 ※ ※ ※


 ※ ※ ※




「さっきのひと、魔族とはいえ綺麗な人だったなぁ……」



 エルフ青年──ビトレイは、ぼんやりと呟いていた。

 その呟きを耳ざとく聞いたようで、隣を歩くエルフ少女──マリエムがムスっとした表情に。



「お兄ちゃんったら、だらしなく鼻を伸ばして……みっともない」

「でもたぶんだけど、同性からしてもあのひとはかなり綺麗な部類に入るんじゃないかな?」

「んー……まあ、それは認めるけどさ」



 街道を歩きながら兄妹がクレアについて話をしている周囲では、武装を解いてはいるものの、周辺に警戒をしているエルフたちの姿もあった。


 彼らは、この一帯の街道を警備する警邏隊なのである。


 街道警邏隊は、代々その街道付近の村が担当することになっており、族長が指揮官として警邏隊を動かすのが習わしだったのだ。

 しかし先日、族長率いる警邏隊と黒エルフの集団が接触してしまい、些細な行き違いから交戦へと発展し、どうにか追い返しはしたものの全員が負傷してしまっていた。

 かといって警邏業務を怠るわけにもいかないので、その子供たちが業務を肩代わりしていたのである。


 そういった背景があっての、先ほどの醜態だったというわけだった。


 族長の息子であるビトレイには指揮官としての経験などあるはずもなく、他の子供たちもそれほど戦いの経験があるわけでもないので、彼らには圧倒的に経験値が不足していたのだ。


 でも……と、マリエムは心の中で思っていた。



(お兄ちゃんが他の女のことで鼻を伸ばすのは、面白くない……)



 複雑な乙女心、というやつである。

 エルフは長寿ながらも、まだ彼女は外見相応の歳であり、思春期なのである。


 マリエルがぶすっと頬を膨らませていると、ビトレイが妹の手をとってきた。



「え……っ」

「マリエム、手を怪我してるじゃないか」

「あ、ああ……さっきの戦闘でね。かすり傷だし」

「ダメだよ。女の子なんだから、肌には気を遣わないと」



 そう言ってビトレイは、治療魔法を施す。

 彼は剣も弓も攻撃魔法すら不得手だが、代わりに治療魔法だけは得意なのだ。



「あ、ありがと……」



 さっきまでのふくれっ面はどこへやら。

 手をとる兄から顔を背けるマリエムの頬は、薄っすらと紅潮しているのだった。


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