第13話 一般課程の日常

 一個上がって一般課程でも当然授業はある。

 より実践的になり、いよいよ魔法使いだなという感じだった。

「頭が痛いぜ。なんだよ、いきなりレベルアップしやがって!!」

「んだよ、このくらいどうって事ねぇ!!」

 これが、アリーナとの休み時間定番の会話だった。

「おーい、サーシャ。この論文だけどさ、頭に来たから対論書いてやったぞ。やり返してみろ!!」

 一人が近づいてきて、紙束を置いていった。

「……ほう、喧嘩売ってきたな。ぶちのめしてやる!!」

「なに、論文なんて書いたの。生意気にも!?」

 アリーナが私を抱えた。

「当然、洗うぞ。生意気な!!」

「な、なんで、洗うんだよ!?」


「今だけいうぞ、猫のくせに論文書くな!!」

「だって、書きたくなっちまったもんはなぁ……」

 私を抱いたままアリーナがため息を吐いた。

「さすがに、好きでやってるヤツは違うぜ。嫌いじゃないじゃ勝てんな」

 アリーナが苦笑した。

「他にないもん。そりゃ、本気にもなるぜ!!」

「いいねぇ、その心構え。どれ、私も本気になるかね。そのうち、口利いてもらえなくなっちまうぜ!!」

 アリーナが私を気持抱きしめた。

「……それだけは、何があってもないと思うけどね。恩義を忘れるようなヤツではないぞ!!」

 私は笑った。

「恩義なんて感じなくていいよ。勝手にやってるお節介だからさ。しっかし、お互い友人が増えないねぇ。私の場合、タダの王女が邪魔するんだよね。ビビってこないから」

 アリーナが笑った。

「嫌がらせはなくなったけどね。友人ってレベルまでは、なかなか仲良くなれないもんだ。分かっちゃいたけど、猫は猫で辛いもんだ!!」

 私は笑った。

「なにせ、猫野郎に負けるながスローガンになってるからね。お陰で、試験の平均点が飛躍的に上がったとか。貢献しているといえば貢献してるな」

「ううう……やっぱ、そういう目で見られるんだよねぇ。友人どころじゃないぜ!!」

 私は苦笑した。

「まあ、友人いない同士仲良くやろうぜ!!」

 アリーナが笑った。


 巨大な食堂は三食のメシを提供するだけではない。

 暇なのかなんなのか、合間にはお茶だの何だのを出している。

 風呂上がりでフワフワにされた私は、アリーナに抱えられて食堂にきた。

「……猫故にケーキを食えぬ。いっそ、食っちまってもいい気はするが」

「食っちゃえよ。食わないとまた洗うぞ!!」

 今日に限って、わざわざケーキを二個買ったアリーナがいった。

「……食っちゃえ。黙ってれば分からねぇ」

 私は生まれて初めて、ケーキなる食い物を食った。

「……人間と味覚が違うからな。多分、同じ味じゃないけど美味な」

「だろ、ここのケーキは美味いんだ。茶は単なる色水だけど!!」

 実際、この食堂で茶を頼む学生はまずいなかった。

「まあ、猫舌だから茶なんてどうでもいいけど。ケーキが美味すぎるぜ」

「なんだ、ハマっちまったか。もう一個買ってきてやる」

 アリーナが席を外した。

 瞬間、潜んでいた学生三人に捕獲された。

「これなんだ。これが、最大の謎なんだ。研究材料にこれ以上のものはない」

 三人の内の一人に抱えられ、私は食堂から連れ出された。


「テメェ!!」

 すぐに気がついたアリーナが追ってきた。

「きたぞ、フルパワーだ!!」

 三人が一気に加速した。

「……明らかに、魔法を使ってるな。筋力じゃない」

 となれば、話は早かった。

 私は呪文を唱えた。

「……甘いよ。とっくに封じてある」

 この瞬間、私はただのお喋り猫になった。

 アリーナは遠ざかっていき、私はため息を吐いた。

 これで終わりだと思ったら、アリーナがメイスをぶん投げた。

 ゴスッともの凄い音がして、一人倒された。

「……そうきたか。それ、投げる武器ではないのだがな」

 私を抱えてる野郎は、呪文を唱えた。

 足が床から浮き、非常識にも廊下を高速飛行始めた。

「ってか、飛行の魔法って超高難度なんだけど!?」

「これで僕の実力が分かったかな。取りあえず、解剖からやってみようか」

 どこに行くのかと思いきや、この野郎は寮に飛び込んだ。

 瞬間、立ちはだかった管理人のオバチャンがニヤリと笑い、野郎の顔面に拳をめり込ませ、見事に撃墜した。

「廊下は飛ぶな!!」

 一言怒鳴り、オバチャンはどこかに消えていった。

「……ど、どんな、動体視力してるんだろう。猫もビックリだぜ」

 私は廊下で伸びてる野郎の下から這い出た。

「なんだよ実験材料ってよ。解剖だと」

 顔面に爪を立て、メチャクチャに引っ掻いてやった。

「こんなもんしか出来ないぜ。猫だから!!」

 私は息を吐き、寮にきたついでに自分の部屋に入った。

「ああ、いたいた。よかった!!」

 ベッドの上で丸くなっていたら、アリーナが飛び込んで来て抱きかかえた。

「……なによ、研究材料って。そんな感じかよ」

「あんなのどうでもいいだろ。こうやっときゃ問題ねぇ!!」

 アリーナが私を強く抱きしめた。

「お前だけじゃね。そう思ってくれるの?」

「それならそれでいいだろ。他にいたらラッキーくらいでよ。なんか文句あっか!!」

 アリーナが笑みを浮かべた、

「……そうだね、一人確保してればいいや。それで、十分だ」

「それが分かりゃいい。ったく、ロクなのいねぇな!!」

 アリーナが笑みを浮かべた。

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