幻想の黙示録
天夜 未可
弧が描かれる
ある日、少年は本当に孤独となった
その出来事は日常の中で、しかも少年の目の前で起こった
警察から父親が被害にあった事故の事情聴取を終えて、家族との思い出が詰まった古びたアパートの一室に帰った
昨日まで、この時間帯には夕飯を作り父親と明るい食事を共にしていたが、今では明かりを付けずにカーテンを全開にしたまま
不意に窓から外を見て、星が瞬き、月がない夜空を見てから、古びた畳に寝そべりながら蹲る
そして、何度も事故……少年にとっては事件とも言えるの風景を何度も夢で見て、起きても忘れられずに現実で思い返した
それを繰り返しているうちに後悔が胸に渦巻き、少年の生きる気力と自分以外の人への信頼を自ら壊して……否、もう壊れている
幸か不幸か、生きなければと言う矛盾に満ちた気持ちがあった
進学する予定だった高校を辞退し働く進路を取ると決心した
受験勉強を応援してくれた父さんにその事を書いた手紙と故人である母親と父親のツーショット写真を父さんの棺に入れてから心に決めていた
この写真は宝物と言っていた
だから一緒に、天国に持っていってほしいという思いを込めて
(世間から見れば可哀想な奴なんだろうな)
その日は何も食べずに寝てしまった
▽▽▽
俺の運命か動いたのは月が嗤う日
俺は買い物の帰りに人影が自分が住んでいるアパートの玄関前に立っているのを見つけた
(天然記念物が独り身になったから様子見に来たのか?)
そう言われる理由は人類人口が突然、激減したからだ
そもそも進学の理由は父さんに勧められたのと、父さんに楽させる為に出来る限り良い会社に就職しようと思っていたからだ
理由が消えた俺には、かえって真面目に取り組めず、お金の無駄になるだけだ
これからは父さんが働いていた会社に働かせて頂く予定でいる
そこには小さい時からお世話になっているので、その礼が返せるように頑張っていきたいが、主に力仕事なので自信がない
今日はその顔合わせと出来る仕事の確認をした帰りで治安は良いはずなのだが、無属性の家の玄関前に佇む不審者がいる
人権は適応されているが人類は様々な理由から狙われやすい
なので余計に怪しく思える
平和な日本だからと言っても用心しなければならないと俺は護身用のナイフを確認した
気休めではあるが無いよりはマシだとおもって持っている
(なんの用か聞いて、後日来てもらおう)
俺自身は天然記念物と言われることに不快を感じるどころかどうも思わない
だが、そのお陰で自分の身を守るの権限を持っている
こんな時は存分に使わせてもらうので、これには感謝している
そう思いながら近づいて直ぐに、交番に行ってからの方がマシだったと思うことになった
その理由を話すには精霊についてを説明する必要がある
それは6つの種族と精霊の力、もとい〝
精霊は飛んでくる前から6つの種族に別れていた
それは〝
それぞれの種族で操れるものは1つだけで赤は炎、青は水、紫は風、黄は雷、緑は植物を
容姿について肌色は遺伝子で決まり、髪と瞳は種族によって変わっている
察しの通りであれば
妖精は人類から見れば逆らう術のない存在
更にその妖精の特異な存在は〝無彩色〟
説明させて貰うと色でいえば黒や白、そして灰色を指す色のこと
〝白〟は寿命が近づくにつれて髪が白くなり完全に寿命が尽きた時、瞳からも色が無くなり、完全に白くなる
その為、白は死の象徴として扱われ、白が入っている者は死期が近くならない限り存在しない
〝黒〟は精霊や人の生物の感情や言霊から生まれた存在
例えば俗に言う〝妖怪〟そして、人が死んだ後、〝幽霊〟になって現れれば、髪と瞳は黒くなると言われていて、どんな形で現れるか、どのような思考を持っているのかも分からない存在
なので種族名に宝石の名は無く〝
〝灰色〟は存在が生まれるかも分からない状態
そして今、何故その説明をしたのかと言うと
少年の家の前に居るのが、精霊の中で最も得体のしれない〝ウネウネしている黒い何かを纏った人の形〟の
「やぁあっとぉ……
見ぃいつけぇたぁあ……!」
それは人の形をしていながらも、黒いミストの様なものが、重力に関係無く辺りに分散されて〝黒い空間〟が広がり精霊とは思えない存在
その度に髪を放射状にうねらせながら、怪しい光を放つ瞳は少年に向いていた
俺は自分が狙いだと知り、1歩後退ると、それは不気味な声を出しながら俺に近づいてくる
(
本当に警察でも対処、出来るのか!?)
遭遇し、最悪のケースになったのは大昔からある
俺は携帯電話を持っていないので、意を決して反対側を向き、一番近い交番に向かおうと走った
追いかけてくると思っていた
後ろから〝黒い空間〟としか表せないものが俺を後ろから追い越した
その瞬間、恐怖ゆえの寒気で鳥肌がたつ
それは
(諦めたんじゃない
俺を追う準備をしてるんだ!)
この時は気付いてなかったが
俺と
俺は人通りのない夜の道で、その事に気づかずに助けを求めて走り続けた
▽▽▽
街の外から、その一部始終を眺めていた白髪の少女は目を隠すタイプの黒のヴェネチアンマスクを付けた
そして白い粒子となって気付かれないように、誰も入ろうとしない街に入っていった
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