短編集

黒い猫

猫に小判

第1話


 この町の中では一応『都会』と呼ばれるている。しかし、世間的に言うと……どうなんだろう……と言われそうな場所の中心に『それ』はある。


 そして、ここで差している『それ』とは――『公園』の事だ。


 私たちは、ずっと……生まれた時からここにいる。ただもっと詳しく言ってしまうと、私は物心ついた時からここにいる。


 決して『ずっとここに住んでいる』と言うのは……やや語弊がある様に思う。


 だって私たちは、ただ気ままに楽しく生活しているだけで、『決まり』や『ルール』なんてモノは私たち『猫のあいだ』には存在しない。


 でも、よく『この公園』いるのは……ただ単に生活しやすいからだ。ここは緑が生い茂り、私たちの目線ではさながらジャングルの様に見える。


 しかも、備え付けの蛇口は……相当古いのかきっちり絞まらず、水がポタポタと落ちてしまう。


 これらの特徴からでも分かる通り、この公園はお世辞にも『新しく』は……ない。


 そんな『場所』ではあるが『私』はずっといる。いつから……という明確な事は覚えていない。


 何の変哲もない。特徴と言えば、さっきから言っている通り『お世辞にも新しいとは言えないところ』ぐらいか……。


 それがこの『公園』だ。


 でも、たまーに……『人間』が来る。しかも、その中には本当にごくたまーに『悩みを持った人間』が来る。


 そして、そんな『人間たち』は私たちを見た時、大概「お前らは『悩み』なんて無さそうだな」と言う。


 だから、私はたち……そんな『人間たち』に言いたい事がある。


『もうちょっと……お気楽に生きればいいじゃない』


 私たちの様な存在に何か言っている暇があったら、その間に動けばいいのに……とすら思ってしまう。


 本当に『人間』というモノは……私たちが思っている以上に難儀な生き物である――――。

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