18-3
その後、ホワイトスナイパーの姿を見た者はいなかった。プロゲーマー資格をはく奪されたという説もあるが、SNS上で名前を見なくなったので、そう言う事なのだろう。わずか一日も経過していないのに、このような状態になるのにはダークフォースの異常性もあるのかもしれない。しかし、ホワイトスナイパーを名乗るプレイヤーは何人か現れており、そちらは本来の彼とは無関係だ。
「あのスナイパーは、一体何者なのか」
ゲーセン内のセンターモニターで動画を見ていた照月(てるつき)アスカも、あのホワイトスナイパーに関して疑問に思う。
「結局、ダークフォースとの関係も不明のままでもみ消された印象ね」
秋月千早(あきづき・ちはや)は、今回の件だけでなくダークフォースに関与した人物は消されてしまうのか、と思い始める。しかし、本当にそうだという証拠もないので憶測でしかないだろう。
【あのホワイトスナイパーは本物なのか?】
【もしかすると、ダークフォースの方は偽者だった可能性もあるな】
【どうしてだ?】
【あちらには既に有名な実況者等を騙った人物がいた事も判明している】
【そうなると、あのホワイトスナイパーも?】
【本人かどうか不明だが、偽者と言う路線もあり得るだろうな】
SNS上でも有名プロゲーマーが起こした事件としては非常に大きかったので、別人説やなりすましと言う説を信じる人物もいる。中にはホワイトスナイパーのプロ資格復活を求める署名を集めようとした人物もいたようだが、不謹慎と言う事で炎上したらしい。
「芸能人のネガティブニュースをコンテンツ炎上に利用しようとしたからこそ、こう言う事が起こった」
秋月と照月がいるゲーセンとは別のゲーセン、センターモニターの前で動画を視聴していた人物がいる。その右手にはスマホがあり、そこでSNSの状況をチェックしていたようでもあった。動画を見ている割合が多く、SNSは二の次か?
「人々は、SNS炎上から反省点を見つけ出してコンテンツ流通の正常化に努めなければいけない。それが――」
彼女は私服姿だったが、やはりというかフードを深く被って顔を隠していた。そして、三笠(みかさ)と大和(やまと)の動画を見て何か羨ましそうな視線を向けていたのである。
「結局、ヒュベリオンはダークフォースをも捨て駒として扱い、自身のコンテンツ宣伝に利用した。ダークフォースがまとめサイトクラスの悪だとしても、かませ犬のように扱うのも問題があるだろう」
センターモニターを見ていた人物、それはセンチュリオンだったのだが、周囲のギャラリーは気付いていない。むしろ、あえて分かっていて放置した路線もあるだろう。彼女には過去に、騒動を起こした事例がある事もあって。
二人は数分後に別のプレイヤーのプレイ動画も視聴した。それはアルテミシアのプレイ動画である。大和、三笠、ビスマルクは共通してパワードアーマーを使っているのが唯一の違う箇所だろうか? ビスマルクはメインかもしれないが、大和と三笠はサブと言う可能性も否定できない。
「あのプレイスタイルは?」
秋月は大和と三笠のプレイスタイルに変化があった事に気付いた。主に遠距離をメインとしているタイプなのに、今回は三笠が突撃役になっている。
(今回のレイドボスが移動式である事を踏まえた変更か? それとも違う理由か)
照月はレイドボスが移動するタイプで、更に言えば飛行タイプに近いこともあって役割分担したと考えた。飛行タイプのレイドボスには接近武器は届かない。飛行できれば接近して殴り飛ばす事は可能だろうが、飛行状態では行動が制約されるので厳しいだろう。そう言う時には遠距離武器が役に立つ。無移行が空を飛んでいてもお構いなしで攻撃を当てられるからだ。
(遠距離武器を使わずに攻撃を当てるなんて、高層系の建物から攻撃をしないと当たらないのでは? 飛行状態ならば、何とかなりそうだけど)
ふとした疑問は秋月からも。接近武器では攻撃を当てる事が難しいのだが、飛行能力で当てられるだろう。しかし、似たような事は照月も思っていたが、エネルギー消費などを考えると効率がいいとも思えない。その中で、三笠がはじき出した回答は連続ジャンプの要領でターゲットに接近する事だった。
【連続ジャンプと言うか、あの場合はホバリングだな】
【ブースターユニット等で代用できそうだが、ボタンタイミング等がシビアな気配もする】
【VRであれば何とかなりそうだが、ARはタイミングがシビアだぞ】
【やっぱり、飛行がベストでは?】
【飛行ではESPでもエネルギーを消費する。だからこそ、こういうテクニックが必要とされているのかもしれない】
【ますます、イースポーツ大会に向けた動きが活発化しそうだな】
SNS上でも様々な話が浮上している。特にイースポーツ大会で使えそうな技術をマスターする事は必須かもしれない。それを踏まえると、トップランカーである大和と三笠、それに近いビスマルクの動画は需要があるのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます