15-2


 四月一〇日午前十一時、ダークフォースが暴れているというニュースが拡散され、一時的なパニックが発生する。しかし、一部はガーディアンによって即時に鎮圧されたのだが、あまりにも手際が早い事でマッチポンプを疑う事があった。


「鎮圧速度が早いのはありがたいが、あまりにも早すぎる」


「これではダークフォースの情報がガーディアンに筒抜けであるように思えるな」


「むしろ、逆だ。ガーディアンにスパイがいて都合よくシナリオを動かしている可能性が高い」


「それは違うだろう。ダークフォースが野放しにされて無法地帯化すれば、逆ガーディアンが炎上するだろう」


「ダークフォースが暴れて都合がいいのは、アフィリエイト系まとめサイトの管理人や芸能事務所と言った所だ。他の関係者には利益にならない」


「では、このスピード摘発をどう説明する? 瞬間移動か? それとも魔法か?」


「魔法はあり得ない。それこそ、WEB小説の見過ぎだろう」


 一連のニュースをセンターモニターで見ていたギャラリーも、さすがに驚いているようである。驚いていないギャラリーは、ARゲームとは無関係かヒーローブレイカーのプrてイヤーではないのかもしれない。実際、ダークフォースの襲撃されていると報告が上がっているのはどれもヒーローブレイカーだからだ。


【ヒーローブレイカーがピンポイントで狙われているのは?】


【最近になって人気になったとしか――】


【炎上する要素はシステム面かもしれないが、これは意見が割れる】


【もっと違う個所では? 例えば、超有名アイドルとのタイアップとか】


【それもないだろうな。コラボはあるだろうが、タイアップは聞かない】


 SNS上でも意見は割れており、何故に炎上したのかと言う理由が不明なのも情報拡散に拍車をかけているのだろう。しかし、この炎上自体も何者かが仕掛けた炎上商法とも言われており、様々なニュースが拡散している。


 こうした状況もSNS上の混乱の原因と言えるかもしれない。公式では『フェイクニュースの拡散をしないように』と注意喚起をしているが、目立った効果は見られない。


【やはり、過去のテンプレやヒットしたコンテンツに便乗するような流れを絶たなければ】


【それが超有名アイドル商法事件を生み出した元凶だろう】


【過去の財産に頼りきりになる流れは、何としても終わらせなければいけない】


 それ以外にも一部の意見が拡散しており、特定芸能事務所ばかりが売れ続けるような状況、俗に言う円盤商法や炎上商法も禁止すべきと言う発言まであった。



 同タイミング、竹ノ塚のARゲーム専門ゲーセンではガーディアンがダークフォースのプレイヤーに勝利、見事に拘束をしていた。彼らの外見は機動隊等の様な重装甲であり、これで素早い動きが出来るのか疑問に思う様な装備である。ヒーローブレイカーでも共通の外見をしたアバターを使う。


 その為か、彼らのクラスは自動的にパワードスーツになるだろうか? 基本的に素顔を見せるのはNGなのかは不明だが、彼らもARメットと似たような特殊形状のメットを着用している。


 ヒーローブレイカーのレイドバトルではプレイ中の対戦相手への攻撃はペナルティの対象となる為、ゲーム終了後を狙うか勝利するしか選択肢がない。このケースでも、ガーディアン側が勝利しての拘束と言う展開となった。だからこそ、うまい具合に拘束出来たと言える。


「――別エリアでは敗北をしたようだ。どちらにしても、彼らをガーディアン本部に」


「負けた? まさか、ダークフォースに油断したと?」


「そうではない。おそらく、向こうにも強力なプレイヤーがいる証拠だろうな」


 他のエリアでは敗北したガーディアンがいると無線連絡を受け、様々な個所で指示を待つ。プレイヤーを拘束というと物騒に聞こえるが、ダークフォースの構成員という事であれば話は別だ。彼らが暴力事件や器物破損などを起こしていたら、それは警察の仕事なので色々な部分で複雑化し、警察に知られてはいけない事も知られてしまう。


「我々は他の目撃情報があるエリアへ移動し、ダークフォースを拘束する」


 リーダーの指示を聞き、他のガーディアンメンバーが撤収を始めた。どうやら、次のエリアへ移動するのだろう。それに、これ以上ゲーセンに長居をしてしまうと店側にも迷惑がかかるという配慮なのかもしれない。


(ガーディアンの動きが素早いだと? 一体、何が起きているというのか)


 ガーディアンの動向をゲーセンの外で見ていたのは、相変わらずのARスーツ姿であるアルビオンだ。彼は今まで別のダークフォース構成員の援護をしていたのだが、別の救援コールを受けて駆けつけた結果がガーディアンによる拘束現場だったのである。


(この状況、どう考えても上に報告するべき案件か。むしろ、放置して様子を見るべきか)


 報告をしようとしても、ガーディアンに察知されては逆効果になる。それを踏まえて、アルビオンは報告をせずに様子を見る事にした。数分後には、他のガーディアンも外に出てきたので下手にダークフォースと接触すれば、向こうに正体が知られかねない。


(現状でガーディアンに正体を知られるのは得策ではない。ここは、止む得ないか)


 他にも救援コールの出ているエリアはあるのだが、それらもガーディアンに先を越されていると判断し、別のエリアへと向かう。

「あの人物は確か――」


 ゲーセンから外に出てきたのは、私服姿のビスマルクである。本日はバイトがないので、ゲーセンへ遠征に向かっていた所で、今回の事件に遭遇したのだ。


(やはり、ダークフォースと繋がりのある人物が情報を流しているのか?)


 あそこまで都合よくガーディアンが駆けつけるのもおかしいと考えたビスマルクは、アルビオンを尾行しようとも考えた。しかし、あの人物を追いかけても情報が得られるとは思えない。やはり、接触するべきはアルストロメリアのメンバーにするべきと判断する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る