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四月四日午後二時二〇分頃――天津風唯(あまつかぜ・ゆい)は秋葉原のARゲームエリアに姿を見せていた。エリアとしては商店街や電気街等からは離れており、秋葉原駅との距離も遠いように思える。それでも、徒歩一〇分位なので苦にはならないのだろう。
ゲームエリアは草加市等とは違い、屋内エリアと屋外エリアに分離していたのが特徴だ。屋外専用ARゲームと言えばレーシング系がメインになる。それ以外では、パルクールを題材としたARパルクールだろうか。ヒーローブレイカーとは毛色が違うゲームなのは言うまでもない。
「本当に、ここで合っているのか?」
さすがの天津風も、店の入り口で『ヒーローブレイカー新入荷!』と書かれたアルミの看板は見かけたが、本当にここなのかは保証できない。あの時に目撃したゲーム画面は、間違いなくこの系列店舗のはずだが。
(ガジェットはARゲームで共通して使用出来るが、ホームページには特に何も――)
考えながら歩くと歩きスマホ等と間違われる為、足を止めてホームページの様々なページを確認している。しかし、使用するのがARガジェット以外は特に記載がないので逆に不安もあった。
「直接、筺体を見ればわかるか」
実機を見れば何か分かると思った彼女は、再び歩き出す。ホームページを見ていたスマホは再び白衣のポケットにしまう。そして、周囲を見回すことなく、まっすぐに筺体のあるスペースへと移動を始める。
その天津風が目撃したのは、広いフィールドに周囲は特殊なバリアが張られているスタジアムと言えなくない物だった。別のARゲームをヒーローブレイカーにコンバートしたのか――と天津風は考えたが、センターモニターを見てもこれで正しい。まるで対戦格闘ゲームにおけるリングを思わせる位の光景であるが、その広さは半径三〇〇メートル位はありそうだった。
(これを置く為に、大量の筺体を撤去したとも考えづらいか)
これ以上の広さを持つフィールドのARゲームは指折り数える程度しかない。鬼ごっこ系やパルクールと言った物は、基本的に屋外フィールドを使用するケースが多く、屋内は滅多にないだろう。それを踏まえても、屋内でこれほどのスペースを使うのは異例中の異例だろうか。天井の高さは五メートル以上はある。そこの部分だけ吹きぬけと言うのも、ヒーローブレイカーが異常と言えるのかもしれない。
「まずは、プレイの様子を見て見るか」
実際にプレイするのは他のプレイヤーのプレイしている様子を見てからでも遅くはない――そう考えていたが、プレイ動画はセンターモニターでも視聴できる。それを踏まえると、モニターで見た方が逆に上級者のプレイ等も見られる可能性が高いだろう。
同タイミングで、竹ノ塚のゲーセンでは休憩スペースで動画を見ている一団があった。その一団とは、アルストロメリアの五人だったのである。それ以外にも休憩している人物はいるのだが、特にスペースを独占している訳ではないので大きなトラブルはないようだ。
「なるほど」
「これはこれで、すごい衣装ですよね」
照月(てるつき)アスカは彼女のコスプレ動画を見て、関心をする一方で秋月千早(あきづき・ちはや)は赤面している。誰の動画かと言うと、島風彩音(しまかぜ・あやね)のコスプレ動画だった。この動画ではセクシー系女騎士のコスチュームだが、肌色の割合はコレでも少ない。
「これがARゲームで使用しているシステムと同じとは、信じられない」
逆に自分もやってみようかと考えていたのは木曾(きそ)アスナである。彼女も島風と同じようにバーチャルコスプレイヤーでも、と思う部分があるようだ。
「やはり、こう言う流れにもなってくるか」
逆にアサシン・イカヅチは島風のコスプレには興味がないらしく、長門(ながと)ハルと共に別の動画を見ていた。その動画は、大和(やまと)によるプレイ動画と言ってもいい。
「トップランカー大和、彼女に勝つには――」
「しかし、あのトップランカーに付け入る隙があるとは思えません」
イカヅチが弱点を探すのに対し、完璧なプレイスタイルを披露する大和には勝ち目がないと長門は考えていた。
「完全無欠のプレイヤーなんて存在しない。それこそ、作られたプレイヤーだ」
イカヅチは大和のプレイに何か思う箇所があるような発言をする。まるで、弱点のないプレイヤーはチートプレイヤーと認識してもいいという様な考えにも見えた。
「そこまで無敵なプレイヤーがいないのは分かっています。それこそ、漫画かアニメの主人公ですよね」
長門も自分の考えをぶつけるのだが、イカヅチは無言で動画を見ているだけである。無視をしている訳ではないので、あえてこの話はここで打ち切る事にした。下手に周囲の空気を変化させても解散危機になったらおしまいだろう。
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