第4話 扱いにくいお年頃


 夢美乃先生の原稿を無事戴いた帰り。

 

 オーシャンビュー東京の最寄り・東京メトロ

 丸の内線池袋駅の昇降口を降りようとしてたら、

 後方から声をかけられた。

 

 

『小鳥遊くん ――』


「あ、笙野課長」



 笙野 正美しょうの まさみさん。

 企画営業課の課長さんだ。

 

 

「今から帰りかい?」


「えぇ、そうですが」


「なら乗っていきなさい。ちょうど私も書店回りが

 終わったところでね」



 路肩には課長の自家用車レクサスが停まっていた。

 

 

 


「―― じゃ、おやすみ。

 ちゃんと戸締まりしてから休むんだよ」


「はい、おやすみなさい」 


   

 課長を見送ってから玄関エントランスに

 向き直ると ――、

 ガラス戸の向こう側にいつの間にか真守まもるがいて。

 ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

 (真守は東京の大学を受験する為、上京している)

 


「……何よ」


「今の人が和ちゃんの新しい彼氏?」


「! 新しいって、何よ ―― それに、あの人は

 職場の上司だから」


「別に俺はいいと思うけどー? だって今の人、

 めっちゃイケメンで金持ちそうだった」


「あんたねぇ……うちもあんまし偉そうな事は

 言えへんけど、外見だけでパートナー決めてたら

 そのうち手痛いしっぺ返し喰らうでー」


「経験者は語る?」


「ま、そんなとこかな」


「あー、ところでさっきさ駅前でめぐの奴、

 見かけたんだけど」


「なら、連れて帰ってきてよ。もう、*時じゃない、

 14才がふらふら夜の町を徘徊してていい時間

 じゃないわ」


「そんな事よかさー、あいつ、学校でも教頭やら

 生活指導に目ぇつけられてるぜ。1度、和ちゃんが

 きつーく灸をすえた方がええとちゃうか」


「……」



 めぐみは妙子叔母さんの次女だ。


 最近急に色気づいて服装だって少々派手めに

 なってきた。


 女子の14才といえばそうゆうお年頃なのかも

 知れないが、外泊も増えてるし、

 何気に男の気配がするのだ。


 弱冠23才にして甥っ子と姪の面倒を見る私は、

 まんま親の心境で年幼い姪っ子の行動に

 一喜一憂する。   

   


 そして、これはとある日の朝のこと ――。

   

 足早に自室から出て「いってきまーす」と

 玄関口へ向かうめぐみ。


 私は遅出なので、

 LDKのカウンターテーブルに着いて、

 寝ぼけ眼でコーヒーを啜っていた。


 チラリ、めぐみの後ろ姿に目をやり、

 その奇抜というかキテレツな服装に目が点。


 思わずコーヒーも”ぶっ”と吹き出した。



「ちょーっと待ちなさい、めぐみっ!」



 めぐみはうんざりとしたような様子で私を

 振り返った。



「なぁにぃ~? 用があるならさっさと言って。

 私急いでるの」


「何よ、その服装はっ?! 

 あんたはいつから場末のキャバ嬢になったん??」


「ひっど~い。これ、マイクロミニのワンピース。

 けっこうお高かったんだからぁ」


「すぐに着替えてらっしゃい。

 そんな恰好で外出は許しません」


「和ちゃんってば頭固すぎぃ。

 生活指導のおっさんみたい」


「いいから、さっさと着替えてらっしゃい!」



 めぐみは「は~い」と文句タラタラで自室へ

 戻って行った。


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