第38話 冴えない告白のしかた【霞ヶ丘視点】

「ねぇ、倫理…… ううん、倫也くん。あの時に、言いたかったことを言わせてください」

 私は彼をまっすぐ見て、すがるようにそう言った。


「あの時の私は、あなたのことしか考えていなかった。あなたのためだけに、小説を書いていたの。倫也くんは、私のことを単なるクリエイターとしか、見ていなかったのかもしれない。でも、私にとってのあなたは、ひとりのファンじゃなかったのよ。それよりももっと大事な…… ひとりの男の子だった…… この世にたったひとりしかいない男の子だったの」


「やっぱり、気がついていなかったよね? だから、はっきり言うわ。私は、あなたのことが大好きです」

 そう言ってふたりは……


 ※


「って、センパイ。なに書いちゃってるの?」

「なにって、新作の短編のプロットじゃない?」

「これって、明らかに……」

「なによ? くん?」

 私たちはいつものようにじゃれていた……

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