第18話 冴えないふたりのじゃれつきかた

「ねえ、恵? 倫也と喧嘩していたとき、どんなことしてたの?」

「え~、英梨々はどうして、急にそんなこと聞くの~」

「だって、気になるじゃない」

 仲直りの夜が終わって、今度は恋バナに熱をあげるわたしたち。

 温泉に入りながら、深夜テンションで変な話をしていた。


「普通だよ。英梨々とラインしたり、喫茶店でお茶をしたり、数学の問題集を解いたり……」

「え~、いつも通りじゃない。そんなんじゃ、つまらない」

「つまらないと言われましても~」

 わたしは、ホントのことを話して、嘘をついた。


「私なんて、倫也と喧嘩しちゃって、いつもとっても苦しかったのに……」

 英梨々はいつもとは違って、素直だ。こんなに素直だったら、間違いなく私は勝てないと思う。何に勝てないかは、どうでもいいんだけど~


「そうなんだ~。なんか、かなりの頻度で、倫也君から一方的なメッセージが来てたから、あんまり喧嘩した感じしなかったけどね」

 もちろん、これも嘘だ。


「わたしの時なんて、口を利くのに、何年もかかったんだけど……」

「たぶん、倫也君もそのことで勉強したんじゃないのかな~」

「ふ~ん、正妻様はやっぱり余裕がありますわね」

「え~、そんなこと言われても~」

 苦しくないわけがないんだけどな~

 わたしは、内心でそう思いつつ、温泉を楽しんだ。

 

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