第9話 冴えない勇気の見つけかた【英梨々視点】

 わたしは、いつものように校門へ向かう。

 友達や同級生たちが、我先にとわたしに挨拶する。わたしは、ツインテールを躍らせてそれに応えていく。いつもの光景だ。


 そして、このいつもの光景の最後には、いつものように倫也がいる……。


 この日常が戻るのに、何年もかかってしまった。

 もしかしたら、倫也とわたしの関係の中で、この期間は非日常なのかもしれない。でも、もうこれは日常なのだ。それ以外は、もう、認めない。


「最近、あの澤村英梨々が、校内一のオタク男子と仲が良いらしい」

 そんなうわさが広まっているのもしっている。昔のわたしが一番おそれていたうわさだ。でも、もうそんなことはどうでもよかった。


 だって、それは本当なのだから。もう、嘘をつく必要なんてなかった。

 サークルを抜けても、もうわたしと倫也は友だちなんだから。

 仲の良い幼馴染、なんだから……。


 そして、わたしは言う。

 少しだけの勇気をこめて……。


「おはよ、倫也」

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