箱庭東京

鬼木ニル

初めに

もうすぐ平成が終わる。


私は平成に生まれ、そして平成を生きて来た。


最近、何かにつけて『平成最後の』と話題になる。

私の生まれた時代が終わる。

それはいつか来るとはわかっていたことなのに、どこか信じがたく、また物悲しい。


私はよく、昔のことを振り返るようになった。


もうすぐ三十路に入る、大した功績もないちっぽけな人間の記憶だから、そう大層なものはない。

子供の頃に流行ったテレビ番組、歌、友達、学校、家族…とりとめのない思い出たち。

しかし私にとってはどれもかけがえのないもの。


そんな私の思い出の中で、とびきり眩くもあり、また重く伸びる影のような、誰にも言ったことのない『平成の思い出』をここに記そうと思う。


何故かはわからないが、あの秘密をどこかの誰かに知ってほしくなったのだ。

如何せん今まで誰にも言ったことがないもんだから、当時の記憶は少しずつ色褪せ、抜け落ち、ぼんやりと薄れつつある。


当時の会話の一語一句を覚えてはいられないし、日付もあやふや、感覚でやりとを復元し、思い出しがてら出来事が前後することもある。

そこはご了承いただきたい。


また、関わった一人一人に了承を取る術がないので、当時の人物は全て仮名であり、地名や職業、年齢を少しずつぼかしておく。

もしもこの思い出話を読み、少しばかりの心当たりがある方は私に連絡を寄越してくれたらと思う。


さて前置きが長くなったが、どうか私の『平成の思い出話』に付きあってほしい。

大した話ではない。


ただ私にとっては、今まで誰にも話すことのなかった忘れられない出来事だったのである。


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