これがアタシの生きる道!!

日の出とともに、3人と1匹(ワンにゃ)の一行はエルフ集落のセンリ村を離れた。

馬車の轍道をひたすら西へと向かう旅。早朝から出発すれば、次の町には夕方までには着くはずだった。


「ではお父様には、挨拶できたんですね」


寝不足だが晴れ晴れした表情のリジュに、歩きながらアキバが訊ねた。

心なしかなんだか昨日よりも、リジュが少しだけ大きくなったようにアキバには感じられた。


「うん。 それで、アタシ決めたんだ!

 父ちゃんみたいな、キュートでラブリーなアイドルになるって!!」


「キュート……ラブリー……お父様の?……そうですか」

いまいち言っている意味を理解できなかったが、清々しい顔をした少女にアキバはそれ以上何も言わず、そっと微笑んだ。

このエルフの少女にとって、それはとても大切で意味がある事なのだろうことは、ひしひしと伝わってきたからだ。


「うふふ。そのツインテール、とっても似合ってますよ」

昨日とは違い、リジュは頭の上で二箇所髪をリボンで結び、ツインテールになっていた。

それが歩くたびに、そよそよと大きく後ろになびいた。


ユウナと交換したロリータファッションに、大きなリボンのツインテール。

カワイイ系のリジュにその髪型はとってもよく似合っていた。


「これ、父ちゃんが昔使ってたリボンなの!!

 父ちゃんも昔はツインテールで、セクシーなグラビア写真集出してたりしてたんだって!」


「そ、そうですか…」

軽く引き気味のアキバは、それ以上その話題には触れないようにした。

どうやらこの新しい旅の仲間も、いろいろな家庭の事情を抱えているようだと思ったのだ。


「ねぇアキバ? 次って、どんな国だっけぇ?」

頭の上にワンにゃを乗せたまま先頭を歩いていたユウナが、振り返りもせずアキバに訪ねた。

別に新しい国に興味を馳せているわけではなく、ただなんとなく聞いているだけ……であろうことは、ダルそうにネイルのケアをしながらのその態度からも伝わってきた。


「次の国ですか!?ちょっと待ってて下さい!今『王国ウォーカー・最新号』で調べてみますから!!」


それでもアキバは、律儀に雑誌を取り出し懸命にページを操る。

しかし、肝心の現在地のページが見つからず、四苦八苦するアキバ。


……だが、リジュにとっては行き先はどこでも良かった。

この今歩いている道を進めば、きっと新しい世界へ辿り着くだろうことはわかっていたから。


そしてそれは、きっと修羅の道であろうことも……。

かつて父が歩んだ、屍を積み上げ進む『アイドル道』へと続いているのだ。


(ぜったいトップアイドルに、なってやるんだから!!)


数々の大きな猛者(おともだち)や、武者(モノノフ)とも、拳を交えることもあるかもしれない。

しかし、恐れはなかった。あるのは震えるように高揚し、熱く体内を流れる血潮の脈動のみ。


リジュは目の前に続く道を遠く見つめると、キュッと強くツインテールのリボンを結び直した。




だが……そのリボンが魔力を帯び、ボォッ…と青白い光を発していることにまでは、気付かないリジュだった。






第四部に続くよ!!

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