あなたは魔法が使えますか?

餅つき

第1話 まるで魔法

 想像力が必要とされる時代になった日本では多くの高校で脳内解析機(人の妄想、想像した世界を第三者目線で覗くことのできる機械)による特別テストが追加され学生は特別テストか一般入試の二択の選択肢が与えられた。

 特別テストの内容は各学校によって違うが今回の主人公 工藤想くどうそうが受けた想架高校のテストは「エッチな妄想をいかに鮮明にできるか」だった。想架高校は偏差値が高く人気の学校がこんなテストを行ってるなんて誰も想像ができなかったであろうがこのテストこそが学校のレベルを語ってる。

 「想像」と「妄想」は一見似ているように思うが全く違う。

「想像」は人から聞いた話や小説の文を見てその情景を思い浮かべること。

「妄想」は何もない世界から自由に発想、想像してひとつの世界を作ることができる。

 そして人それぞれ使い方は違う。


 今の時代は「想像力」ではない「妄想力」が必要なのである!


 朝7時半、一年C組の手前にある廊下で俺のとある記録が更新されようとしていた。

「じゃあ、いきますよ!」

「はいよ」

互いに手を出し握手の状態になるが決して握手を交わした訳ではない

目を見つめ合い「コンタクトスタート!」


 その合言葉と同時に場時へと吸い込まれる 


 そこは無限に広がる白い世界。

ここはお互いの意識が共有され作られた想像の世界、実際には存在しない簡単に言うと二人の妄想の世界が一つになったということ

 そして俺の3メートルほど前に彼女チャレンジャーがいて今から始まろうとしていた。

「エッチな妄想は大得意でしてね!」

 俺はいつもしている通りの方法で相手を怯ます。

 俺が妄想していくと共に彼女の顔がだんだんと色づいていき……

「負け、負けました」

 彼女は悔しながらに言うと足早にその場を立ち去った。

「ありがとう~!」

 俺は彼女の背中に手をふる

これで141勝目、入学してまだ1か月くらいでこの記録は凄いと我ながらに思ってしまう

 この戦法は単純でこの意識で共有されている世界では感情のブレが大きな影響を与えそのブレを平常に保てないと現実に引き戻される。勝敗はどちらの感情が先にブレるのか

 この場合は俺がエッチな妄想する

 共有された世界なので彼女には俺が妄想した世界も共有される

 彼女が恥ずかしがりブレが生じる

結果現実に引き戻され俺の勝利!

 なんだかこのゲームは6,7年前から生徒中心に行われるらしいがその意図は分からない

 そんなゲームに没頭してしまった俺はあと一人で同学年全員を倒したことになる。

 今まで倒した奴らは変態エッチ、バカエッチ、不思議エッチなど様々なエッチがいたがまだ「真面目エッチ」には出会わなかった。

 「真面目エッチ」この単語は俺が作ったもので今まで見たことない組み合わせのエッチ

そして俺のライバルになるだろう名、聞いたからにヤバい奴だと察してしまうほどのパワーワードの持ち主。

 俺はそんな「真面目エッチ」を探していた


 学校が終わり時刻は午後4時、春の空はまだ明るい。

 今日の授業も寝るか妄想するかの二択で手応えのある奴もいないし……正直この生活に退屈していた。



「ねぇ、あなたがエッチの神様?」

 不意を突かれたせいかその声の主を見た瞬間、頭に稲妻が走った。

 俺が求めていた「真面目エッチ」そのもの

それが今、目の前にいる。

「はぁ……」

俺は口を少しあけ、固まる。

 長い黒髪、真面目感を出しているメガネ、手には勉強して帰るのだろう薄い教科書を持ち、スカートはなぜか短めそして胸が大きい

 まさに俺のライバルにふさわしいルックス

「ねぇ! ちょっとホントにエッチの神様見たいじゃない」

 彼女との会話は初めてだがお母さんの声のように包容力があった。

「えっと、エッチの神様です、とりあえず一戦しませんか?」

 エッチの神様ではないが認めた方が話がスムーズに進むのでここは妥協

「やっぱり! 私の勘はいつも当たるの」

 彼女はそう言うと白くて綺麗な手をそっと差し出す。

「君みたいな組み合わせは初めてだよ」

 彼女は「私だってそうよ」と返すと目を閉じ意識を集中しはじめる

 「コンタクトスタート」

 


 本日二回目のコンタクトで脳が疲れているみたい

「そう言えば君の名前は……」

 意識がもうろうとするなかこれだけは聞いておきたい

「私は清条風架せいじょうふうか1年A組あなたとは別のクラス」

 彼女の声は強く俺の頭に響く

「そんなこと聞いてる場合? あなたなんて瞬殺よ」

 やっと意識を安定させ彼女の方を向いた時

彼女から放たれた黒く憎悪の塊のようなものに俺は飲み込まれ言葉に通り瞬殺された。



 目が覚めた時はあの出来事から1時後、そこは保健室だった。もともとは下駄箱を出てすぐの場所に居たはず

 周りには誰もいなくて荷物だけが隣の机に置いてあった。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 自分の体に目を向けると大量の汗と共に息切れ、手の震えが起こっている。

 彼女の暗い表情と体から放たれた黒いものが頭に染み付いていた。

 そして初めて得意なもので負けるという悔しさを思い知った。

「とりあえず今日は休もう」

 俺は横になりゆっくりと目を閉じた。

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