第358話

「警部補さん……」だがアキラが遮った。

「そう言う悲惨な状態に遭遇したからお嬢様はショックで声が出なくなったンですよ……」

 さすが敏腕弁護士だ。

 思った以上に弁解が上手い。


「ふゥ…ン……、ま、それはそうでしょうが……」矢作も口ごもった。


「あまり思い出したくない記憶なんですから…… その当たりを考えて下さい」

 アキラは上手くはぐらかした。


「フフゥ…ン…… けど、これは大事な事でしてねぇ」

 しかし矢作も容易には引き下がらない。


「大事な事、どう大事だって言うのですか」

 強い口調でアキラも聞き返した。



 何だ…… 大事な事ッて……


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