第319話

 車は路地を出た。私は動悸が激しくなった。


 なぜ…… どうして……


 寄りによってあの男が、この車に……

 今、最も会いたくない男……


 榊 純一…… 榊ルナの親父……


 自分の借金を娘の私に肩代わりさせようとした男……



 あの雨の日の事は決して忘れやしない。あの夜の事を思い出すたび虫酸むしずが走った。 


 運転手の黒木が先程の事が気になったのだろう。


「あの…、さっきの当たり屋の男……

 お嬢様の事を『ルナ』と呼んでましたが」

『うゥ…❗❗❗❗』もう少しで声を上げる寸前だ。

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