異世界神話〜異世界神様になったので、みんな幸せにすることに決めました〜

@ApoLo

プロローグ ロリコンは、死に至る病。

 俺は、小さな女の子が好きだ。


 柔らかい髪の毛、きめ細やかな肌、凹凸のない体つきと、マシュマロみたいに柔らかい手のひら。天使のように無垢な笑みを向けられた日には、心臓が止まってしまうのではないかと思った。


 俺は小さい女の子が好きだ。大好きだ!


 宣言しよう。ロリコンであると。

 高校生に上がった頃、この性癖のおかげでクラスの女子生徒からは白い目で見られていたが、彼女たちはすでに俺の守備範囲外だったので、特にこれと言ってダメージはなかった。


 ああ、ひとつだけ断っておくと、俺はロリコンであって悪人ではない。

 ロリを悲しませたり怖がらせたりするのは本意ではない。遠くから眺めて、それも凝視するのではなく、さり気なく気付かれない程度に見守れればいいんだ。そう、子供好きな老夫婦が小さい子を見て笑顔を浮かべる。そんな感じでロリを眺めていられれば、俺は満足だった。


 ロリコンは決して悪いことではない。と、思っていた。

 だが、結局俺はこのロリコンをこじらせたせいで死んでしまったのだ。



 それは大学の入学を春に控えた少し長めの春休みのこと。

 俺は1人、日雇いのアルバイト代を奮発して日帰りのスキーツアーに参加していた。


 朝イチからスキーを堪能し、昼過ぎぐらいまで滑ったところで急に吹雪いてきた。運営はスキーの続行を困難と判断し、ツアーの参加者達は早めに帰ることになった。文句を垂れている者も少なくなかったが、まぁ山の天候については文句を言っても仕方がない。


 しかし、山を降り始めたところで、更に雪風が強くなった。昼間だというのに視界が真っ暗になるほどの猛吹雪だ。しばらく進まないうちに、バスは雪に埋まって動けなくなる。運転手が山頂に助けを求めに行くという話になり、若い男性客が1人じゃ危ないからと同行を申し出る。実に勇敢なことだと他人事のように思った。残りの乗客はバスの中に残されることとなり、俺もその中のひとりだった。


「いつまで待たせるんだ……」

 そんな文句がバスの中から聞こえてきた頃はまだ良かった。2人が助けを呼びに行って1時間が経過した頃、突然バスのエンジンが停止した。再起動を試みるが、動く気配はない。同時にエアコンも停止。氷点下の外気と雪に埋もれたバス車内はみるみるうちに冷凍庫の中みたいに冷えきった。


 数えるほどしかいない乗客面々は、皆だんだんと寒さにやられて静かになっていった。

 俺もひどい寒さに身を縮めていた。


 静かで冷たい車内。だんだんと感覚が鋭敏になり、ふと俺のロリコンセンサーが反応した。この寒い車内の中に、小さな女の子がいる。俺は席を立ち、乗客を確認しながらバスの前の方へ進んでいった。後ろからだとバスの背もたれに隠れて見えなかったが、小さな女の子がひとり、寒さに肩を震わせえいるのを見つけた。


「だいじょうぶ? お父さんかお母さんは? ひとり?」


 俺は、女の子に声をかけた。聞くと、女の子は先程運転手と出ていった若い男性客連れていた子供だと言う。その日着ていた服の中で最も耐寒性に優れていたジャンバーを脱ぐと、女の子の肩にかけた。


「お兄ちゃんは、寒いの平気だから。これ着てて。だいじょうぶ、もうすぐお父さんが助けが来てくれるよ」


 ひどく寒かったが、ひとりで震えている女の子を少しでも暖かくしてあげられるなら、これぐらい安いものだと思った。

 本当は抱っこして暖めてあげるのがベストだと分かっていたけれど、俺はロリコンだからそれができなかった。抱きかかえた女の子に性的な欲望を抱いてしまうのが怖かったからだ。


 いよいよ女の子の命が危ないともなれば、それもやむなしだが、今現時点においては服を貸してあげるのが俺の限界だった。


 そして俺は死んでしまった。

 凍死だ。


 今回のバス事故で亡くなったのは、俺だけだったらしい。

 女の子は幸い軽い凍傷で済んだ。


 なんともバカな話だ。冷凍庫みたいなバスの中で、服を脱いだりするから死ぬのだ。しかし、俺には女の子を暖めてあげられる術が他になかった。だってロリコンだったから。


 かくして俺は、ロリコンであったがゆえに死んだ。

 まぁ、幸いなことに、この世に未練とか特にないので、これはこれで良かったのかもしれない。



>>>>>>>>>>>>



 気がつくと俺は足下に幾何学模様の描かれた円形の部屋に立っていた。

「あれ……さっきまでバスの中で……夢?」

 周囲を見渡す。見覚えのない室内、家具のたぐいは一切なく、足下には怪しい魔法陣のような幾何学模様。そして目の前に、絶世の美女が立っていた。


 年の頃は20代前半ぐらいだろうか。透き通るような白い肌と、吸い込まれそうなほど大きなまあるい瞳。長い黒髪。ノースリーブのワンピースに包まれた体は、服の上からでもわかるほどの抜群のボッキュッボンなプロポーション、大きく開いた胸元には青いカーネションの花が添えられている。

 

「ようこそお越しくださいました、神様」

 そう言って、美女はうやうやしく頭を垂れた。



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