第23話あかり、未知の世界へダイブする
あかりの眼差しは、職員の腰が引かれるほど力強い。
あかりは気づいていないが、職員は適性検査のチェックシートを静かにデスクの引き出しにしまった。
「職場体験、できませんか?」
抑揚の安定した、柔らかい声で言われる。職員は自我を取り戻し、デスクから眼鏡を取り出す。
「そうですね、インテリア……今のところは……」
あかりの重い圧に潰されないよう、真顔で見ないように努める。
「い、今のところは募集されて、いません」
職員はデスクに両腕を立てて、腰を拳一個分浮かせる。
「だ、だからって諦める必要はありません。職場体験になければ、アルバイトをするのも選択肢の一つです。せ、せっかくだからパソコンで求人閲覧して行かれませんか?」
「分かりました」
年相応の落ち着きが期待外れだったので、あかりは承諾の返事と同時に席を立ちあがる。
結局インテリアを取り扱うアルバイト求人が見付からなかったので、商業施設を散策してから帰宅することにする。
数か所ある内から市内最大の施設を巡ると、全国展開されているインテリアショップ、総合ショップが軒を並べている。
どのショップもカジュアルから上品までテイストがはっきりしている。中には食器の商品とのコーディネートでディスプレイしているショップもある。
客として来店しても、あかりはインテリアのいろはを得ることはできない。
店員に雇用を乞うわけにはいかない。店員も雇われている身だから、勝手なことはできない。
空腹を感じ、帰宅しようとショップを去ると、耳に風を感じる。
扇風機にしては弱い風だと思い、あかりは首だけ右に向ける。
すると、そこには扇風機がなかった。そもそも、そのショップにはミニファンすら置いていない。
一枚の紙が、柱からはみ出た部分が人の出入りで微力の風を扇いでいる。
「……これだ!」
あかりはスマホをポケットから取り出し、その紙を写真として保存する。
アルバイト募集の貼り紙だった。
翌日あかりは応募のため本社に電話をかけ、履歴書を郵送する。
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