第24話あかり、新しいバイトを始める

 翌週、あかりのライフサイクルは変化した。

 平日は大学に通い、そのうち二日と土日はカフェでアルバイト、他の平日二日にインテリアショップでアルバイトをするというものだった。

 あかりが任されたのは、在庫管理と清掃だった。店の売り上げを左右するディスプレイや接客を始めから任されるほど甘い世界ではない。

 商品単価は他店と比べて安価だが、最低でも二千円はする。何も知らない学生に陳列などを任せるのは、店にとって極めて危険なことだ。

 最初の一週間は腰痛に悩まされたあかりだったが、七月になる頃には作業の合間にスタッフ社員の仕事ぶりを裏口から覗く余裕が出てきた。

 九月になると、その努力が認められ、隅の売り場をディスプレイしてみるよう声をかけてもらう。

 食器売り場だったので、家のコーディネートができるわけではないがあかりの私生活に変化が出てきた。

 自炊する回数が増え、テーブルコーディネートをしたりSNSにアップしたりと食事そのものを楽しむようになった。

 体の倦怠感も減り、あかりは勉強もアルバイトも心から楽しむようになった。

 家に帰ると自分の城の世界に飛び込み、身体の疲労を癒す。留年する前は考えられないことだった。

 男の影は完全に消えたが、あかりは寂しさを感じなくなっている。むしろ独り身を楽しんでいる、と親友のまなみに言われる。


 自分の城が完成した、八月以来。


 『さ、あかりさん。最後のステップに入るわよ!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る