無情門

@dhc

第1話

息が苦しい


陸にいるのに溺れているような。

不安発作。わかる奴にしかわからないこの苦しみ。いっそ、安楽死が可能なら喜んでする。

なぜ日本は認めないのか。

溺れる者はそのまま溺れて楽にさせてくれることさえ許しはしない。

その癖、のしあがることも許さない。

どうしろってんだ。


眩しい。

朝四時から目覚めてはいたが、布団から出るのが寒い時期。

親がカーテンを開ける。

口やかましい。歯みがき粉臭い。


プーンと呑気そうに不快な音を立てて蚊が飛ぶ。うるさい。

尻の穴を指で触って嗅いでみる。臭い。


少し頭と首が痛む。

風俗で首をもみちがえたか。

気持ち悪い。そして自分が気持ち悪い。

もう一度、尻の穴を指で触って嗅いでみる。臭い。ただただ臭い。


尻の穴よ、年中臭くて辛くないのか?

人によったら出たり斬られたりして、痛みも加わるんだぞ?生涯それだぞ?


俺なら生まれ変わっても尻の穴にはなりたくない。

ゴキブリになるのも嫌だ。

せ、いや、蝉も蝉で閉じ込められたままて苦しいな。


棺桶に閉じ込められたまま生き埋めにされる映画を思い出した。

やっぱり苦しい。余計なこと考えすぎた。口が臭い。寝起きてこんなに口臭かったか。


疲れたよ、人生。


だらりと渋々起きる。解脱感が辛い。

仕事はない。希望もない。金もない。

あるのは虚しさと、苦しさと、性欲だけ。


試しに全裸で窓を全開にする。

ただそれだけ。

苦しかったせいか、象さんはぞうさんというよりsawさんだ。

そら、縮こまるわな。


本格的に起きる。何をするか。

久しぶりにレンタルイッキ見はした。

歳なのか面白さがわからず面倒くさくなってゲームは途中で売った。

町並みをただ何の当てもなく歩いてもみた。

キアヌの真似をしてスーパーの裏の汚物捨て場の前で、縁石に何時間か座って鴉を眺めてみた。


することがない。

どうするか、尻の穴を触ってそのままうっかり鼻の穴に入れる。臭い。ただただ臭い。


TVは見ない。結論のつかないことをあーだこーだ言い合いしているのをなんで金はらってまで聴かねばならんのだ。ドラマみたいなことは起こりやしない。


トイレに行く。手は洗う。さすがに洗う。

パンを食べる。二日位前だが気にはしない。旨くはないが食えないわけじゃない。

パン作った?とパンツ食った?を言い間違いさせるのてなにが面白かったんだろうなとふと思う。

しょうもないことで笑えた子どもの頃が懐かしい。

何か少しパンがしょっぱい。


また布団に入る。食べてすぐ寝ると胃液が横なりになってうぷっとなるのがわかる。歳だな。


気づけば二時間位時が過ぎていた。

時を止める入門なんてしていない。

クロックなんたらしたわけでもない。

単に意識が飛ぶように寝てしまっただけだ。情けない。どうせならそのまま目覚めなければいいのに。


苦しくなって目が覚める。過呼吸手前、サーファーが喜ぶ位の不安の波が押し寄せる。辛い。

抑え込んでいる内にまた気づけば時間が経つ。寝ていたようだ。情けない。


そうしている内に1日が終わる。

不安と後悔で嗚咽する。そして、寝過ぎて寝られなくなる。

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