回りすぎワロタ
ぬるぬる
1話完結
いつもどおり怠惰に時間を過ごし意味もなく夜中の三時を迎えた日、家から家へと帰るほんのわずかな道で(さてこれを読んでいる人がもしいたら今どういうことだと思っただろう。うちは同じ敷地内に家がふたつあり、それぞれ父と祖父の家に別れている。距離はなんてことはない、徒歩5秒ほどの近さだ。私達家族は父の家のほうに住んでいて、祖父の家にはかつて祖父と祖母がふたりで住んでいた。とは言っても祖父・祖母は両方鬼籍に入り今は無人である。なので私と姉はありがたくも祖父宅をかなり好き勝手に使わせてもらっている。今回の始まりは私がちょうど祖父の家から帰るところの話である。とここまでこと細かく書く必要もあまりないし正直蛇足なのだが私が語りたいので語らせていただいた)空に月を見つけた。黒く塗られた夜空に浮かぶ月はいっとう明るく輝き、太陽のごとく強い光を放っている。その月は細く薄い白にふちどられた灰色とねずみ色の混ざった雲から半分ほど姿を現していて、まるで私に気づいたかのようにすーっと右へと移動した。私は空をあまりまじまじと見つめたことがない。昔からゲームと携帯電話が大好きで空を見上げる時間を液晶画面に捧げていた。月は驚くような早さで流れていく。いや、意思を持って動いているように見える。その動きを私に見せつけているかのようだった。どうだ阿呆め、私のようなばかにでかい星すらこんなに身軽に動けるのだ、それにくらべてお前はどうだ、鉛のような体を引きずり一直線ばかり進む。回れ回れ、衛星軌道を周回してみろノロマめ!そう言われている気がしてならなかった。まあ深夜ならではのぶっ飛んだ妄想でしかないのだが。私はなんだか悔しくなって、しかしその光景があまりにきれいなので文句も出なかった。私にできることはせめてあの月を見返すため、意味もなく夜ふかしすることを止めることくらいだろうか。そう思ってから、怠惰なやつめ、もっとできるだろうとまた月に笑われている気持ちになった。
回りすぎワロタ ぬるぬる @kkk_parin
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