第3話幼馴染みっていいよね?

校庭の屋上には俺山田と憧れの女性神崎藍の二人が立っていた。俺は積りに積もった想いを彼女に伝えるために、ついにこの屋上に呼び出すことに成功したのだ。


「お久しぶりです。山田君」


そう言って黒髪の美少女は、俺に微笑む。微笑んだだけで、俺の心臓をばくばくさせるとはなんという破壊力。だが、ノックアウトされている場合ではない。


「お、お久しぶりゅです」


「ピーちゃん起きてー」


噛んでしまった恥ずかしさと、これから告白するという緊張感でもう心臓がはりさけそうだ。呼吸をどうにか整えて、話を切り出す。


「今日は、き、来てくれて、ありが、とう。どうしても、直接話したいこと、があったんだ」


「もう下校時間だよぉー」


声が上擦るのを感じながらも、一生懸命言葉を絞り出す。彼女は、俺の声一つ一つにしっかりと耳を傾けてくれているようだった。その彼女の態度に安らぎを感じた俺は、彼女への想いを自然と口にしていた。


「俺は君のことが好きだ。付き合ってください!」


「何寝ぼけてんのーもう早く起きないと、置いていっちゃうよっ」


ん?俺の告白の返事が、寝ぼけているで片づけられたぞ。ってか、さっきから、俺の告白を妨害するやからがいるな。あれ、神崎が遠く離れていく。まだ返事を聞いていないぞ。





「やっと起きたぁーピーちゃん、ぐっすりしすぎだよぉ」


俺の耳もとにやんわりとした声がかかる。ぼやけた頭をフル稼働して、自分の状況を整理する。神崎攻略の方法を考えているうちに睡魔に負けてしまったみたいだ。折角なら、神崎が返事をしてくれるところまで見たかった。ほんと夢って自分の好きな夢が見れたらいいのにね。誰かそんな発明してください。お願いします。


 そんなこと考えながら、目をこすって声の主に目を向ける。


「ピーちゃん。部活中に寝ちゃうなんてダメなんだよー」


両手を腰に当ててプンプンお怒りな少女が目の間に立ちはだかっていた。ほんわか声で俺を窘める少女の名前は、宮崎弥生。ショートカットヘアに、丸い顔に、大きなくりくりした目、加えて女子から見ても身長が低めという特徴から小動物を思わせる。それに元来の人懐っこさがあいまって、学校での人気は非常に高い。ちなみに、Bクラス。なぜそんなハイスペックな少女と俺がお知り合いなのかは、幼馴染みだからという言葉に尽きる。うちの学校では、Aクラスが特別扱いされているというだけで、BクラスからEクラスまでの交流は特に問題にならない。そんなわけで、弥生と俺が学校で話しているからといって退学になったりはしないのである。まあ、人気のある女子と仲良くしていることで、無駄に絡んでくる愚か者どもは、数知れずいるわけだが。そういう時には、返り討ちにするまでもなく、戦いは終わるんだよね。俺の惨敗で。


「起きたら早く準備する」


警察官よろしく弥生が俺に指示を出す。それに、はいはいとだけ答えると、


「『はい』、は一回だよぉ」


とお叱りの言葉を頂く。その間も、てきぱきと弥生は俺の身の回りの準備をする。お前は、俺のおかんかっての。そんな弥生の姿を横目に、背伸びをする。そして、どうでもいい会話をしつつ準備を終えると、二人して部室を出る。


「私は顧問の先生に部室の鍵を私に行かないといけないから、ピーちゃんは先に校門の前に行っててねっ」


弥生は、俺が返事をする間もなく駆けていく。そんなに急ぐと転ぶぞと注意しようとすると、案の上コケる。


「弥生、大丈夫か?」


小動物は、こちらを振り返ると、親指をぐっと出して無事を示す。それから、立ち上がると階下に駆けていった。うーむ。ハムスターそっくりだ。


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