変装
(なんか、うん、面白くなってきた……)
抜き足差し足で中庭の芝生を踏みつけ、本館の壁に張り付いて20秒が過ぎた。ここはカメラの死角になっているので動かない限り見つかることは無いのだが(警備員の見回りさえ来なければね)、子どもの頃にやった『かくれんぼ』みたいで胸の高鳴りが収まらない。
『今ここに誰か来たらどうしよう』とか、
『こんな姿を見られたらどうしよう』とか、
いろいろ考えながら脚を動かした。
この台詞だけみると立派な変質者だなぁ。まあ、犯罪者(内定)であることは間違いないので似たようなものか……と思ってしまう自分がいる。
今の格好はこの博物館に出入りしている土建事業者の作業服に似たホームセンターで買った ただの作業着(税抜3,800円)だ。この下にこの博物館の警備会社の制服に似た色のA○KIのスーツ(税抜8,200円)魔改造ver.を着込んでいるので、一枚脱げばパッと見なら分からない。(はず……)
「よっこいしょっと」
作業服を脱ぐと、ゴテゴテと縫い付けられたワッペンが顔を出す。今のご時世、コスプレ用の装飾品がネットの海に溢れているのでかなり高い完成度に仕上げることができた。胸を張って自信作と言えるだろう。
「見分けは…… つかないといいんだけど」
脱いだ作業着をビニール袋に入れて、空気を抜く。脱ぎ捨ててしまうと足がつくかもしれないので処分方法には気を付けなければ……
警備員の格好になったところで、壁に沿って本館に近づいていく。
目の前に一人の同僚(今から)が現れた。
――腹芸のセンスがいま問われる――
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