貴方を見ていたかった
1
「父さん、母さん?」
それを見て
二つの思考の一つは、こういうことは本当にあるんだなと言う感心。一つは、もう手遅れだという事への
まだ信じきれずにいる目の前の光景、ゾンビに親が喰われている様子は、見るに耐えないのに見入ってしまう。
「ヴぁぁぁああぁ............」
ハッと気づき、彰男は咄嗟に逃げ出した。足音に反応したのか、ゾンビも彰男を向いて追いかけてくる。
「うああああああああ!!!!」
まあまあ高い背丈に細い黒縁の眼鏡をかけ、お世辞にもオシャレでは無い服を着ていて、ある程度に整った顔でありながらも全体的に服装が似合うという異質な少年、彰男。彼が涙を浮かべながらもゾンビから必死で逃げる間、道中には誰の姿もなかった。それはただ単に田舎だからではないと思う。普段のままこんな彰男が通れば御年寄が、
「あや。なしたーず」
と声をかける。しかし今日に限ってはそんな御年寄はおらず、バス停にずっと居座るおばあちゃんも見当たらない。ゾンビに関係があるのだろうか。
走って逃げ、彰男はなんとか最寄り駅に着いた。
「ハァハァ......。ここまで来れば、大丈夫だよな?」
呼吸を整え、来た方向を振替る。
「........................」
何かと目があった。生気を感じられない目だ。肉の腐った匂いもし、その通りに皮膚は青く腐っている。
ゾンビだ。こんな所にもいた。
「ヴぁぁぁあ......」
「ああああああああぁぁぁぁぁぁああ!!」
再び逃げ出す。すると振り返り際に、何かとすれ違った気がした。
直後、グチョりという音と共にゾンビの唸り声はやんだ。
もう一度振り返り、見てみる。
そこにはただの肉塊になって倒れているゾンビと弱々しい男が立っていた。
オレンジ色の髪に、黒くて丈の大きいシャツを羽織っている。右手には不格好な木刀。
彰男はすぐに、その男が誰なのかわかった。
「......汰稀............?」
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