梅雨が明けた。気温が高くなる。そろそろ溶ける気がしてきた。セミが鳴いている。セミはいつでも元気だ。どんなに暑くても、鳴いている。

 ある日のこと。その日は泊まりのイベントだった。まだ未明だったが、目を覚ました。すこし外に出てみた。すると、木の幹に、何かがいた。トコトコと登っている。自分より、何十倍も高いところを。

 どれだけの時間が経っただろうか。ふと、歩みを止めた。背中が割れた。徐々に、中から出てくる、セミの成虫。ゆっくりと、ゆっくりと。そして、白い羽を伸ばす。

 明け方、みるとそこには抜け殻があった。たしかにここにはセミがいた。地中での、長い幼虫生活を終え、たったすこしの、成虫期間へ。セミはどんなに暑くても鳴いている。セミにとっては、一生に一度の夏。それは、心の底からの、叫びかもしれない。

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