レビューのススメ

雲江斬太

レビューのススメ



 レビューを書きたーい。でも書き方が分からなーい。


 そういう人、いると思います。心配ありません。レビューなんて、超適当に書いちゃっていいんです。そうです。まず、ちゃんと書こうとする変な責任感とか、義務感を捨てましょう。


 あなたは読者です。お客様です。だから、でっかい態度で、読んだ小説の感想を下賜してやればいいのです。でも、あんまり的外れなこと言っちゃうと、影で笑われちゃうから、注意が必要ですね。


「なんだこのエール、全然冷えてないじゃないか!」

 とかね。

 本場のエールはぬるいらしいですよ、ロンドン行ったことないから知らないけど。



 さて、カクヨムのレビューには、ある程度のガイドラインがあります。

 まず、「作品作者への誹謗中傷」、「小説と関係ない内容」、「誤字脱字の指摘」、「読まない投稿」、「配慮のないネタバレ」はしないということです。

 基本が、他のユーザーさんへのお薦めであります。


 ということで、だいたいの方が書いているレビューのテンプレートなんですが、


①まず簡単なあらすじ


➁読んだ感想


➂お勧めポイント



 こんな感じです。



 ときに、「レビューを書きたーい」と思っているあなたは、小説は書きますか? 書かないとしても、少なくとも読みはしますよね? 読む方、これすなわち、これから書く可能性のある方であると思って話をすすめます。


 上記三点。「あらすじ」「感想」「お薦めポイント」というものは、人間に二つの能力を要求します。


 それは、「読む」ことと「書く」ことです。特に、「読む」ことは大事です。


 「読む」とは、文字通り、書いてある文字を理解するという意味もありますが、「先を読む」というように、「想像」や「推測」なども多分に含んでいます。物事の上っ面ばかり眺めることを「読む」とは言わないのです。


 書いてある文字を判読し、その内容を把握し、理解し、そこからその奥にあるものを見つけ出す。それが「読む」という能力です。



 そして、次に「書く」です。

 これは、頭の中にあるものを、文字という道具を使って、文章にて表現し、さらにはそれを読んだ人に伝えられる。そこまでがワンセットで要求されます。


 俳優の堺雅人さんは、こんなことを言っていました。

「ぼくらの仕事は、伝えてナンボだから」

 これは、書き手も同じです。


 書いただけで満足するのなら、カクヨムにくる必要はないのではないでしょうか? カクヨムで小説を公開するのなら、「伝えてナンボ」なのです。



 そして、このカクとヨムのふたつの能力。なにかに役立つと思いません? そうです。これは「小説」を書くための必須技術に他なりません。



 小説を書くのは難しいです。それは、レビューを書くのも同じです。なかなか難しい。でも、レビューを上手く書ける人は、例外なく小説も上手いです。


 文章は、書けば書くほど上達します。小説は、なかなか難しいです。が、レビューはそうでもない。練習すれば、上手くなります。そしてそこで身に付いた技術は、100%小説執筆の力となります。

 だから、難しいとか、やり方が分からないとか言わずに、とりあえず挑戦しましょう。

 だって、レビューですよ。よっぽど頓珍漢なことを書かない限り、非難は浴びませんから。


 ということで、項目別に、簡単に解説。



●あらすじ


 小説を読んで、概要を把握し、要約して簡単に記述する。文章力が養われます。と同時に、これはプロットの勉強にもなります。

 よくできた小説ほど、あらすじが書き易いはずです。


「百姓に雇われたサムライたちが、襲ってくる野武士から村を守る」

 これ映画『七人の侍』のあらすじです。たったこれだけに要約できます。


 「面白い」、「これは凄い」という小説のあらすじを綺麗に要約してみましょう。下手な小説講座を受講するより、はるかに勉強になるはずです。


 そして、小技をひとつ。この要約されたプロットは、いくらパクっても問題ありません。上記の『七人の侍』のあらすじも、百姓とか野武士とか村とかの単語を入れ替えて、まったくおんなじような小説を書いても、まったく問題ないんです。

 事実、『荒野の七人』とか『宇宙の七人』とか『七人のオタク』とかいう映画が実在しますが、どこからもクレームは来ていません。



●感想


 ここが難しいと感じる人が多いかもしれません。難しいと思ったら、書かなくていいです。


 ですが、最初から最後まで読んだということは、あなたは何かしら、その小説に感じるものがあったからではないでしょうか? 自分の心に正直に耳を澄ませ、その声を聴いてみてはどうでしょう?


 人は案外、自分の本当に好きな物、本当にやりたいことを見つけられないものです。それを探しましょう。自分の好きな物ややりたいこかとが分からないで、いったいどうして、小説の中のキャラクターの好きな物やりたいことが分かるというのでしょう。

 これは、実は小説を書く上で重要なことです。



●お薦めポイント


 ここは難しいです。が、難しいだけに重要です。


 どんなものでも、けなすのは簡単です。ダメだしは、誰にでもできます。


 ベートーヴェンの第五交響曲「運命」。これを「うるさい」というのは簡単です。


 また、ピカソの絵。あれを「下手」だと言うのも簡単です。


 が、ベートーヴェンの「運命」やピカソの絵の、どこが凄いかを人に説明するのは至難の技です。


 そこには三つの技術が必要です。


 まず「どうして素晴らしいかを理解する知識」、それを「素晴らしいと感じられるセンス」、その「素晴らしさを人に伝える技術」。


 センスのない人は、どうにもなりません。が、知識と技術はどうにかなります。


 「面白い!」と感じられる小説を読んだとき、「ああ、面白かった」で終わってしまっては、ただそれだけです。


 どうして面白いのか? なにが他と違うのか? 作者はどうやってそれを行っているのか? そのための方法論、技術、選択。

 その小説を解体し、ひとつひとつのパーツに分解して吟味し、作者の技術を洗い出し、それを自分の物とする。


 これほどの勉強があるでしょうか?


 しかも、ドラマ「下町ロケット」のように、ライバル社の機械を購入してきて、分解して、計測する必要なんてありません。あなたはその小説を「読む」だけでいいのだから。


 金はまったく、時間は大して、労力もそれほど必要ありません。



 この、「良いところ」を見つける技術は、とても役に立ちます。

 人の粗を探していても、あなたのプラスなることはありません。が、他人の良いところを見つければ、それはその瞬間からあなたのプラスになります。小説もしかり。


 面白かった小説の、いえ、面白くなくてもいいです、読んだ小説の、「良いところ」を見つけることができれば、それはその瞬間から、あなたの小説に使うことが出来ます。


 そして、もしかしたら、その「良いところ」は、あなたの学校で、あるいは職場で、そのまま使える「良いところ」かもしれません。





 簡単に書くつもりが、ちょっと長くなっちゃいました。


 もしあなたが、面白いなと感じた小説を読んだのならば、ちょっと勇気を出してレビューを書いてみてはいかがでしょうか?

 がんばって書けば書いただけ、それはあなたに還ってきます。もしかしたら、二倍にも三倍にもなって。


 そして、そういうレビューの書き方をしないと、損だと、ぼくは思うのですが。



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