罪と罪人が嫌いで嫌いで

御劔 深夜

第1話 聖人君子になりたくて

 生まれた頃かどうかは分からないがきっとそうだろう。


ずっと罪人が嫌いだった。奴等は常に害悪だ。人の命を奪い、悲しませる。


そして罪も嫌いだった……。


その二つがなければこの世界に悲しみや憎しみ、恨みなどは生まれなかったろう。


同時に幸せや喜び、楽しさだって存在しなかっただろうけど悲しみと引き換えならそれも十分に理解できた。


だから僕は決意した――聖人君子になろうと。


それから時が過ぎ、七つの大罪を知った。

強欲・怠惰・憤怒・暴食・色欲・傲慢・嫉妬からなるそれは僕が僕を嫌いになるきっかけになったんだ。


それから僕はまず謙遜を極めようとした。心を常に落ち着かせ、決して怒ることはない。


次に何事も欲せず――休養すらも欲せず働いた。働いては倒れ、また働いては倒れを繰り返した。


今度は食事を制限した。元々あまり食べる方ではなかったのでこれに関しては大して苦ではなかった。


それから女性を意識しないよう心掛けた。時は第二次成長――思春期の最中。それらの欲を抑えるのはかなり堪えた。


そしてどれだけ仕事をこなして技術が向上しようと誰にも威張ることは無かった。 


そして最後にどれだけ技術が向上した自分よりさらに上を行く者がいても妬むことはなかった。


そのとき初めて自分に達成感を感じた。夢が、願いが叶った――叶えたんだと心から思えた。


やっと七つの大罪を犯さずに済んだのだ。


しかしこの胸の虚無感は無くならなかった。


そして罪人ではなくなった僕はこう願う――……と。

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