第93話 ライトノベルを述べる

 正直な話を書こう。

 私はライトノベルが

 書かないのではない。

 書けないのだ。

 一度チャレンジをしたが無理だった。

 最終的に相も変わらず、私の物語で逆に笑えた。

 だから、皮肉でもなんでもなく、素直にライトノベルが書ける人は尊敬する。


 ただ、宴会芸みたいに『俺のノリについて来い!』みたいな小説は苦手だ。

『作者が読者に甘えてはダメだ』

 私はモノガキの師匠から何度も言われた。

 だが、ライトノベルの中には読者に甘えた作品も多いのは事実だろう。


 ライトノベルの起源は色々な説が言われているが、一説にはスレイヤーズという小説からだという。

 でも「チート(この言葉もライトノベルから知った)の主人公が物事を解決する」というのはスレイヤーズ以前からあり時代劇小説でも見られる。

 間隔をあける文章は多分、ケータイ小説からの派生だろう。

 

 まあ、いろいろ言われているが多くのライトノベル、特に『なろう系』などと言われるものは酷似しているものが多い。

――ある日、死んで。または、パーティーから離れ

――何もない自分だと思っていたけど

――前世の記憶や、特殊な道具や能力で

――商売をしたり勇者のように崇められたり美少女とイチャイチャしたり

 こんなのが文字通り掃いて捨てるほどある。


 私はライトノベルを否定はしない。

 ただ、他の書き手、時代劇小説なりハードボイルドなりSFなりが少ないのが非常に気になる。

 もっと書けば、『掃いて捨てるほど』のライトノベル作家は『ジャンル』にこだわり過ぎているように思える。


 種の保存や進化は模造コピーではなく、様々な交配ミキシングによって起こる。

 同じものばかりでは万が一、環境の変化などが起こると一気に全滅することがあるからだ。

 ひるがえって、文芸にも同じことが言える。

 ライトノベルという新しい種の誕生は喜ばしい事だろう。

 ただ、作者が「この作品の真似をして少し設定を変えれば読者は受けてくれる」という読者に甘えて自己承認欲求を満たそうとすれば間違えなく駄作になるし、続かない。


 何度も書いているが、私はライトノベルが書けない。

 でも、否定をしようとは思わない。

――もったないな

 と思う。

 それは今、自分が置かれている環境や思いを使っていないから。

 ただ、単に理想を書いているだけだから。

 

 私が小説を書き始めて驚いたことがある。

 自分の世界が少しずつ広くなっていったのである。

 私の書く小説はジャンルを特に決めていない。

 出来るだけ登場人物たちと同じような体験(まあ、違法なことはしませんが)や読書をすることで物語に少しでも現実味を持たせたい。

 虐められて自殺を毎日考えていた私にとって、これは救いだった。


 今の若者は不幸だという人がいる。

 私は価値観の相違はあれ、今の若者たちは便利な世界に生きていると思う。

 二十代の頃の私はとにかく、人に会った。

 師匠にも出会ったのもこの頃。

 今思うと悲しい思いも、赤面の思いもあるけど、そこが私の土台になっている。

 三十代はほぼ読書。

 派遣だったので空いた時間はひたすら病院で心のリハビリと図書館で読書をして知識を蓄えた。

 今は調べようと思えばスマートフォンやネットで簡単に検索できる。

 私も利用しているが便利だ。

 ただ、油断すると便利さに甘えて体や精神が置いてきぼりになるので、そこは気を付けたい。


『素直にカッコつけないで自分が面白いと思ったことを、言いたいことを書け。そして、人に出会え』

 全てはそこから始まる。

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