第16話 私は人を好きになったことがないらしい
昔、まだ、二十代前半の頃に言われた言葉。
「あなた、人を愛したことがないのね」
本来なら、ここで何か言い返しでもできればよかったのだが、私は妙に納得した。
『ああ、私は愛されないんだ』
それから、こう思った。
『人を愛する人っての言うのが、こんなに人を見下すのならば私は人を愛さない。あんな目を持つ人間なんかになるものか』
それから十年以上過ぎた。
私には脳に障害があり、人との意思疎通が少し難があることが分かった。
そして、この障害は世間で認識され始めているのも知った。
『そうか、私だけが特別ではなかったか』
人が愛せるかと思った。
だが、すでに他者は私にとって
怖いのだ。
恐ろしいのだ。
嫌なのだ。
気持ち悪いとさえ思った。
――人が愛せない
この絶望たるや途方もない。
漫画や小説で「愛なんていらない」などというが、とんでもない話である。
私はいつか、人を本気で愛せるようになるのだろうか?
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