第6話 美味しそうに見える料理漫画は?

 私は現在、一人暮らしをしている。

 自炊派である。

 まあ、コンビニのお惣菜にも時々お世話になっているが、基本は自炊。

 というか、手抜き。


 さて、この世界には、というか、漫画業界には『グルメ漫画』と呼ばれるジャンルがある。

 例えば、『美味しんぼ(雁屋哲 原作・花咲アキラ 画)』を筆頭に同じく長期連載の『クッキングパパ(うえやまとち)』、エッセー漫画『あたりまえのぜひたく(きくち正太)』よくよく考えるとジャンルを説明するのに困る『きのう、何食べた?(よしながふみ)』・・・・・・・・・・・・・

 その分類も多種多様。

 専門で作る人側から小学生まで、日本文化論から一般人でも作れる料理まで、有名無名問わず、幅も広い。


 ここまでが前説。

 本題。

 あなた。

 そう、画面の向こうで文字を読んでいるあなたに聞きたい。

『あなたが美味しそうに見えた料理漫画は何ですか?』


 私は子供のころから親に台所仕事などを手伝ったりしていたので、正直、面倒な料理や自然派の食事を見ていると嫌気がさしてくる。

――手作りのものは素晴らしい

――人工物は絶対悪

――養殖よりも天然が美味い

 などと言われると(漫画だけど)いらだつ自分がいる。

 命にランク付けをして悦に入っているように思えてしょうがない。


 そのせいか、実は『グルメ漫画』と呼ばれるもので「美味しそう」「作ってみたい」と思わせた作品は自分が思っているより少ない。

 その中で、一番私の胃袋を刺激したのは、『大東京ビンボー生活マニュアル(前川つかさ)』

 精密な絵ではない。

 ほぼ記号のようにシンプルである。

 でも、それがとても美味しそうなのだ。

 肉屋の揚げたてのコロッケ、回転寿司、アメリカンコーヒー、湯豆腐・・・・・・

 この作品が連載されていたころの日本はバブルであり、グルメが一つのステータスになっていた。

 その流れに逆行するように、(しかも派手ではなく)日常生活に根の張った主人公は自分の食を豊かに、楽しく、丁寧に営んでいる。


 料理対決もなければ文化批判もない。

 だからこそ、私は安心できる。

 日常を大切にする尊さを学ぶのだ。

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