第34話 狂化
私は魔人化したツモアのステータスを見ました。
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魔人 アームット 男 33歳
レベル:28
状態:狂化
HP:2846/2871
MP:788/788
筋力:596
耐久:492
俊敏:526
知力:410
スキル:『身体強化 LV4』『魔力流動 LV2』『剛力 LV1』『闘気 LV1』
『見切り LV1』「体力回復 LV9」「鑑定 LV7」「研究 LV7」
「気配感知 LV5」「製薬 LV5」「調合 LV4」「記憶力上昇 LV3」
「体術 LV2」「突進 LV2」
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今までの魔人と違い身体能力に特化しています。これでは空にいる魔石たちを破壊できないでしょう。彼の変身は無駄となりました。
「Ahhhhhhhhhh!!!!!」
ツモアが、いえ、本名はアームットですね、叫び声をあげます。魔物化による狂暴化の影響を受けて、我を忘れているようです。呼吸を荒く繰り返し、彼はこちらを向きました。
殺気を感じた私は土魔石に防壁を張らせました。次の瞬間防壁が粉砕されます。
ちょ、死ぬ。殺される。あれは無理です。
私はすぐさま地面を蹴ってツモアから離れました。ブーツに付与した「強蹴 LV3」により一気に距離を稼ぎます。
私はすぐさまスリングショットで石魔石を放ちました。岩の塊がツモアの顔に直撃します。が、それをつかんで投げ返してきました。悪夢のような光景です。
「あぶな!」
私は間一髪それを避けました。しかしその間にツモアに接近されてしまいました。
丸太のような腕が振るわれ、私は殴り飛ばされました。後ろに飛んで衝撃を逃がしつつ装甲紙によってガードしたにもかかわらず意識が飛びそうになります。吹き飛んでいた私は壁にたたきつけられました。
「ぐえっ」
衝撃で変な声が出たのを最後に、肺が痙攣して呼吸ができません。動くこともできません。もしかしたら今のが最期の言葉になるかも。
ツモアがこちらに向かってきます。死が、近づいてきます。
土魔石が妨害しようとしますが止められません。鉈やスリングショットは私が動けないので何もできません。ブレスレットは上空。弾用の魔石はポーチの中なのでツモアに向かって魔法を撃てません。
詰みです。
「マリーン! 待たせたな!」
その時、ギミーさんの声が聞こえました。
「最強の助っ人を連れてきたぞ!」
戦力を集めるよう頼んだギミーさんがやっと到着したのです。
「最強だなんて、照れるよ」
ギミーさんに続いて誰かの声が聞こえました。そして次の瞬間、ツモアが蹴り飛ばされました。
蹴ったのは長身の男性。長剣を背負い、動きやすさを優先した防具を身につけています。メガネが鑑定結果を映しました。
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鑑定不能
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『「ステータス隠蔽」だな。私の鑑定よりレベルが高い』
メガネが解説しました。
「よく一人で耐えたね。大丈夫かい?」
男性が私にそう言いました。その男性は、ヨハン唯一のSランク冒険者のルークさんでした。
ツモアがルークさんに襲い掛かります。理性を失って力任せに戦うツモアと冷静に攻撃を捌くルークさんの戦い方は対照的でした。
「マリーン! 大丈夫!?」
エルーシャが駆け寄ってきました。あなたも来てたんですか。ここは危ないですよ。
「ボロボロじゃん! 早くポーション飲んで!」
エルーシャが私を起こしポーションを飲ませてきます。が、背を打った衝撃でのどが閉塞しているため、うまく飲めません。ちょ、待ってエルーシャ。溺れる、ポーションに溺れる!
なんとかポーションを飲み、少し楽になりました。声を出せるようになります。
「なぜ彼がここに。領主の護衛についていたのでは」
「ギルマスが領主に進言したんだよ。護衛の任を解いて街の防衛に回すべきだって」
ギルマス、本当に頼れる人ですね。
「他の魔人もルークが倒した。後はあの魔人と、結界の修復と魔物の掃討と街の復興だけだよ」
残り仕事多い……。後ルークさんすごい。
ツモアとルークさんの戦いは次第に一方的になりました。ツモアの攻撃は全て防がれ、ルークさんのカウンターをツモアは防げません。
やがてツモアは防戦一方となり、ルークさんはツモアの防御をかいくぐって有効打を浴びせました。
ツモアが距離をとると、今度は魔法で一方的に攻撃します。
Sランクの名は伊達ではありませんでした。ツモアは身体能力特化なのに、肉弾戦でルークさんに勝てません。
「さすが、万能のルークって言われるだけあるね」
エルーシャがそう言いました。それがルークさんの二つ名です。なんでも一流にこなせる、器用貧乏を超越して完璧超人であることが、ルークさんがSランクである所以です。
ルークさんはツモアに完封勝利しました。
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