第12話 うごめく影

 起きてすぐ、私は掃除をしていました。夜通し続いた宴で散らかった机や床を、ギルド職員だからという理由で片づけさせられています。こんなことしてる場合じゃないのに。魔物発生の原因を特定しないといけないのに。


 そんなことを思いながら、私はまとめた生ごみをギルド裏のごみ捨て場に持ってきました。机や床の上に少量ずつ散乱していた食べ残しも、まとめたらそこそこの量になって重いです。後、色んなものが混じって汚いです。私はエルーシャの言葉を思い出しました。


「汚れを集めているだけで総量は変わらない、ですか」


 汚れ、ごみ、……そう言えば魔物は二体ともごみが関連した場所に現れましたね。クロークロウはごみ捨て場に、トレントは埋め立て場に。そしてどちらも発生原因は不明です。瘴気だまりは見つからずじまいです。瘴気……。


「もしかして……」


 私の中で、ある懸念が浮かび上がりました。




 私は宴の片づけをエルーシャに押し付けて解体場に向かいました。もし私の懸念があたっていたとしたら、そこに今回の事件の原因があるはずだからです。


 解体場につくと私はある備品に手を掛けました。その備品とはそう、瘴気清浄機です。私は動力の魔石を取り出しました。


 私は解体場にあったハンマーを手にすると振りかぶり、地面においた魔石を砕く体勢をとりました。そして魔石にスキルを使います。


 魔石から蜘蛛のような足が生えました。魔物化です。私は時間を置かずにハンマーで魔石を粉砕しました。


「やっぱり、瘴気が含まれていましたか。」


 瘴気清浄機によって、空中から集めた瘴気が魔石の中にため込まれていたのです。空中の瘴気量はごくわずかでも、長い間吸収され続ければかなりの量の瘴気をため込みます。そして使い捨てられた魔石を誤って飲み込んでしまうなどして魔物が発生した、というのが今回の事件の真相でした。




 この事実は早急に街全体へ広められました。事態はギルドレベルでは収まらず、街全体を挙げての回収騒ぎとなったのです。瘴気清浄機の使用は禁止され、開発元は逮捕、使用された魔石は集められ厳重に管理されることになりました。既に埋められた物もあるため、埋立地は土魔法使い総出で岩盤で覆い封印されました。



 これで一件落着、と思ったら数日後、私はギルマスに呼び出されました。


「今回の件はご苦労だった」

「いえ、それほどでもありません」

「以前の毒草混入でもそうだったが、私は君の捜査能力を評価している」

「はあ」

「そこで君にある人物を探してもらいたい」

「……ある人物というのは」

「これからいうことは機密事項だ」

「待ってください聞きたくありません他の人に頼んでくださいそれでは」

「今までの瘴気にまつわる事件を手引きした者がいる」


 面倒ごとの予感を察知し逃げようとした私でしたが、逃がしてはもらえませんでした。


「毒草事件の犯人も、瘴気清浄機の開発者も、ツモアという男から技術提供を受けたと証言している。金儲けの話があると言って近づいてきたそうだ。他にも犯罪者数名からツモアという名前が出ている」

「……その男性が一連の事件の真犯人ということでしょうか」

「少なくとも重要参考人であることは確かだ」

「手掛かりは」

「ない。誰も素顔を見たことがないといっている。それ以外もすべて謎だ」


 それでどうやって探せというのでしょうか。


「今後新たな事件でも奴がかかわっている可能性がある。もし奴の手がかりを見つけたら追え」



 人と仕事が集まる街、そこには犯罪も集まってきます。今ヨハンの中で大きな犯罪の影がうごめいていました。


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これでごみ編は終了です。

お読みくださりありがとうございます。


次回予告:街で死体が歩いていたという通報を受けたマリーン。調査に出たマリーンはなんと逮捕される事態に!? 死体の正体とは? こうご期待。

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