第6話 物の価値は値付け次第

「ダルドさん、ちょっと気になることがあるんですけど、剣を見せてもらっていいですか」


 ダンジョンの外で休憩している間に、私はダルドさんに声を掛けました。


「別にいいが、どうかしたのか?」


 そう言ってダルドさんは私に剣を見せます。その剣には、来たときは無かった金メッキが施されていました。


「やっぱり」

「ん? なんだこりゃ?金?」


 ダルドさんが顔をしかめます。


「いえ、おそらくですが、ミミズの粘液です。さっき付いたのが渇いたんですよ」

「ってことは……」


 私たちはジェミーさんのリュックを見ました。あの中にある金塊は全て……。


「なーんだ……金じゃなかったの」


 マリーさんが残念そうに言いました。


「鑑定してみないことにはわかりませんので、一応持って帰りましょうか」


 こうして私たちは町へと帰りました。



 ジェミーさんはその後、すべてを吐きました。偶然あのダンジョンを見つけ、金塊に目がくらんで独占を図ったそうです。ギルドで売ればばれてしまうと考えたジェミーさんは、闇市場で売りさばくことにしたそうです。しかしヤクザに目を付けられたジェミーさんは囲い込まれ、逃げるに逃げられず毎日採掘をさせられることになったそうです。


 私達が持ち帰った金塊を鑑定した結果、街で出回っている偽の金と同じであることが分かりました。そのことから、連日起きていた詐欺の犯人としてそのヤクザは衛兵に捕らえられました。


 そして、マントンさんも無事見つかりました。取っておいたチンピラの財布に話を聞いたところ、チンピラ達はヤクザに雇われてジェミーさんの監視と警護をしていたそうです。ジェミーさんを尾行していたマントンさんはチンピラに見つかりヤクザの事務所に監禁されていましたが、逮捕で押し入った衛兵に無事保護されたのでした。


 ジェミーさんは詐欺のことを知らず金を本物と信じていたため法的処罰は与えられませんでした。しかしダンジョン発見の報告をせず独占を図り町の住民にも間接的に迷惑をかけたということで、冒険者ギルドから、Eランクへの降格と罰金、一か月の無償の奉仕活動を言い渡されました。


 浮気調査の結果はシロでした。




 それから数日後、


「ふーんふふーん。うふふふふーん」


 エルーシャがすごい上機嫌で鼻歌を歌っていました。うっとおしい。


「うるさいですよ。仕事の邪魔です」

「あらごめーん。でもひがみはよくないなあ。心の貧しさがにじみ出てるよ?」


 イラッ。


「成金め」


 価値がないと思われていた偽の金ことミミズ粘液でしたが、驚くことにその市場価格は急上昇していました。なんとあの粘液が固まったものが、土属性のAランク魔石であることが判明したのです。


 この開拓都市ヨハンは現在建設ラッシュ。土属性の魔石の需要は最大値。その価値は同量の金塊を上回るほどでした。


 エルーシャは50万イエーンで買った魔石を数倍の価格で転売して大もうけしたのでした。


 こんなことなら私もあの洞窟で拾っておけばよかった、と私は思ったのでした。



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これで浮気調査編は終了です。


次回予告:引きこもり編

 引きこもりを更生させる依頼を受けたマリーン、引きこもりが抱える不思議な問題とは。乞うご期待。

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