第3話 追い剥ぎではありません

 次の日、私はマントンさんの捜索依頼を出しました。受注してくれたのはCランク冒険者のダルドさんとマリーさんです。


 マントンさん捜索のアテは、今回の発端のジェミーさん。マントンさんは彼を尾行して行方不明となりました。なのでもう一度彼を尾行して手掛かりを探ります。ついでに浮気調査もできて一石二鳥です。



 ジェミーさんの家を張ってしばらくして、ジェミーさんが姿を現しました。外で狩猟採集を行う一般的な冒険者の装いです。私たちはジェミーさんの追跡を始めました。


「というか、あんたもついてくるんだな」


 ダルドさんがそう私に言いました。


「また行方不明がでたら困るので、同僚に仕事を押し付けてきました」


 今頃エルーシャは私に食事をおごってもらうため奮闘している事でしょう。


「では私はあなたたちを離れて見ているので、このまま追跡をお願いします」



 追跡を始めて数分、ダルドさん達がチンピラに絡まれました。ですがそこはベテランのCランク冒険者。すぐに返り討ちにしました。路地裏に気絶したチンピラたちが重なります。私はダルドさん達の元へ合流しました。


「お怪我はありませんでしたか」

「ああ、俺たちは大丈夫だ。それより、こいつらが行方不明の原因か?」

「まだわかりません。今日偶然絡んできただけかもしれませんし」

「ジェミーはどうするの? まだ追う?」

「そうですね。このまま追跡を続けてください」


 ダルドさん達が追跡を再開し、私はチンピラ達の財布を集めました。追剥ではありません。後で私のスキルを使ってチンピラたちの素性を調べるためです。衣服と違って財布は毎日同じものを使う人が多いので、持ち主の素行を尋ねる物としては最適です。財布の中身だけ返して、私も追跡を再開しました。



 ジェミーさんはその後町を出て、森へと入っていきました。街の外に一人では危険ですので私はダルドさんたちに合流し、尾行を続けました。何度か魔物に襲われたものの、ダルドさんが素早く切り伏せてジェミーさんに気づかれずに倒すことができました。


 そして尾行を続けて数十分、ジェミーさんは地面にできた亀裂へと入っていきました。



「こんなところに穴が空いてるなんてな。これってダンジョンか?」

「外の洞窟なんだからダンジョンでしょ」

「ギルドがまだ把握していないダンジョンでしょうね」


 私たちは顔を見合わせます。ここは瘴気渦巻く森の中。洞窟に魔物が潜んでいる可能性は非常に高いです。そして洞窟の中は魔物が発した瘴気の逃げ場がないため濃い瘴気だまりが生まれ、強い魔物が多くなることが知られています。未確認の洞窟に入るのには危険を覚悟しないといけません。


「ジェミーさんが中にいることですし、中の様子だけ確認しましょう。それでギルドに報告して、人員をそろえて調査するべきです」


 新しいダンジョンは見つけ次第ギルドに報告する義務があります。ジェミーさんは明らかにこのダンジョンを目指していたため、後で報告義務の不履行を理由に拘束できます。


「俺たちはいいが、あんたは大丈夫なのか? 強い魔物が出たらさすがに守ってやれないぞ」

「自衛の手段は用意してあります。無理だと思ったらすぐ逃げましょう」


 こうして私たちはダンジョンへと足を踏み入れました。

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