第37話 女同士?の二人旅

 ラギの工房に戻って集合した私達。新たな装備に女勇者のご自慢の胸を揺らしながらため息をもらす


「はぁ…、もう何で私がこんな鎧着なきゃなんないのさ」


 女勇者はよほどその装備が気に入らんようだな。よし、少し慰めてやるか


「そう不貞腐れるな。物は良いのだからな」


 そう言って彼女の胸にボールを投げつけてやると、ビキニアーマーは綺麗にこちらにボールを弾き返してくる


「ポン」  「ポン」  「ポン」

  「ボヨン」  「ボヨン」  「ボヨン」


「遊んでんじゃないよ!」


 弾き返す際の胸の動きが可笑しく、何度投げつけていると女勇者は流石に癇に障ったのか、投げつけてボールをキャッチしたタイミングで撃ち抜いてきた


「タン!」

  「パァン!」


「調子が戻ったではないかフランチェスカ」


 私は手の平で受け止めた弾丸を親指で弾いて返してやった


「パチンッ」


「ふん」


 その弾丸を彼女は受け止めコートのポケットに入れた。・・・のだが


「えい!」

   「ペシンッ」


 ポケットに入れていた以前私からもぎ取った手を取り出し、その手を操りデコピンの要領で弾を撃ち返してきた


「ビュウウウゥゥゥゥン」


 意外と勢いが付いていたのに少し驚いたが、なんて事は無い。すでに私から切り離され大半の魔力を失った手ではこの程度か


「パシン」


 私が返された弾を掴むと女勇者は悪態をつく


「ちっ、魔王の手でもこの程度かい」


「元魔王だ。本当にまだ持っていたのかそんな気色が悪い物を」


アンヌあんたの手のダンス見てみる?」


「いらん!!」


 私の返答を聞くと、女勇者は手を再びポケットしまって再び落ち込み始めた。面倒なヤツだ


「こんな時、あいつ等なら悪乗りするか愛想笑いしてくれたんだけどね」


「今更海賊だった頃が恋しいか?」


「こう静かだとね。はたから見りゃ賑やかなもんなんだろうけどさ。あんたはそう言うの無いのかい?元、魔王様はさ」


「私は無い。むしろ煩わしい事の方が多かったからな、孤独の方がマシというものよ」


「へぇ~・・・」


 女勇者は悪戯好きのネコ科生物の様な目で見つめてくる


「なんだフランチェスカ、その目は」


「そんな魔王様が、なんだかんだで私達に付き合ってくれてるのは、少なくともそれくらいは認めてくれてるって事かしらね?」


 私は脳裏に下卑た笑みを浮かべながら付き従うかつての部下の姿を思い浮かべ、癪だが認めてやることにした。こういう女は経験上、否定したところである事ない事付け加えて面白おかしくしようとするからな


「ふん・・・・。まあ、そう言う事だ。そこから私の魔王生活がどれだけつまらんものだったか察してくれ」


「そいつはご愁傷様。世の中ままならないものね」


「思い通りになってもつまらんさ、それは元魔王である私が保証しよう。お楽しみはトラブルの中にこそある」


「トラブルメーカーばかりと付き合うのもどうかと思うけど?」


「貴様が言うか」


 もう二人のトラブルメーカーの方に目をやると、装備開発の為、ラギにあれこれ質問攻めに合っていた


「ねえねえ、他にもなんか面白い物もってなぁ~い?」


「拾いに行けばまだあるが・・・。本当に必要なのか?」


「うん、この多重構造ってところにインスピレーションを感じてね」


「そんな事より我が死の友よ、この僕の魂すらも消し去る高火力装備の開発をぉほお!!」


「気が向いたらね神官さん。今はこっち」


 相変わらずだな。女勇者に一応言い含めておくか


「奴らには今の事は言ってくれるなよ。今以上に調子に乗りかねん」


「分かってるわよ。私だってこれ以上の面倒はゴメンさね、ほろ酔いくらいが一番気持ちが良いからね酒は」


 色々とツッコミどころがある言葉だな酒飲みめ・・・、とも思ったが黙っておくか。そう思考えていると不意にラギがこちらに視線を向けてくる気配がした


「ねえシュエル、私はこの子たちの装備作るのでゴチャゴチャしちゃうから、暇なその子を連れてどっか行ってくればどう?」


「コイツと・・・二人で?」


 女勇者は何やら動揺してるが、そういえばそうか


「そう言えば、貴様と二人っきりでいた事は無かったなフランチェスカよ」


 私が語り掛けると女勇者は蒼い顔をして狼狽えた


「ちょちょちょ!まってまって! ホントに二人っきりになって平気なんでしょうね?大丈夫なのよね! そうよね二人とも!」


 女勇者の質問に勇聖者はこう答え


「死にます。むしろ殺してください」


 勇聖者の言葉を聞いた勇者が笑いながらこう言った


「ははは! 何度も死ぬと思った事があっても、結局死ななかったなそういえば。だから大丈夫だよフラン、多少骨は折れるだろうがな」


 二人の言葉を聞いて女勇者が騒ぎ始め


「不死身と無駄に丈夫なアンタ達と一緒にしないでくれる!?」


 まったく騒がしい奴だ。しかたない


「そう喚くな。男と二人っきりになるのがそんなに嫌なら、女の姿になってやろうではないか生娘め」


 私は女の姿になり女勇者の顔を押さえて優しくなだめるも、なかなか大人しくなってくれなかった。むしろ騒がしい


「そう言う問題じゃない! ねえ助け・・・」


 女勇者は他の勇者二人に助けを求めたが


「生娘‥‥、そうか、あんだけ男漁りしてたのはそんな理由だ有ったんだな。今までフランの酒攻めに耐えられる男が居なかったのか」


「おかわいそうに・・・」


「いや、聖職者のお前は歓迎してやれよバルディ」


「そうでした」


 二人の答えを聞いてさらに女勇者は騒ぎ出す。ここまで来ると鬱陶しい


「ちょっとぉ!違うから!私はッ…」


 私は女勇者の頭を強く押さえて・・・


「やかましい! どこに行きたいか直接脳に聞いてやる!」


 ・・・頭に指をめり込ませて女勇者の適当な記憶を探った


「痛い痛い痛い!」


「さぁあ、どこに行きたいのかなぁ? ん?」


 面白そうな記憶を見つけたので私は女勇者の頭から指を引き抜いた


「ヌポッ」


「あ…、ちょっと痛いじゃない!」


 また五月蠅くしようとする女勇者の肩に手を置いてなだめてやる


「水臭いではないか、そんなに欲しければ取りに行けばいいものを」


「え、なに? 何の話???」


「では行こうか、宝島へ」


「ちょっとアンタまさか!?」


 私は無理矢理女勇者を連れ、目的地に転移した。転移したしようとした瞬間、いってらっしゃーいと気の抜けた声が聞こえた気がしたが、一体誰の声だったかは聞き取れなんだ

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