第32話 四天王(3人)との決闘
ちょっとガラクタを漁りに来ただけだと言うのに、四天王とやらと戦うことになってしまった
「フハハハ! 勝手に先走って倒れおったか最弱め!」
四天王の一番強そうな者がそう喚いていると、勇者が彼の前に出た
「お、生きが良さそうだなお前さん、てめぇの相手はこのトーマスがするぜ」
「いいだろう、このゲッテムが相手になってやる!」
一番弱い勇者がヤツに挑むか…、いい経験になるであろうし別に構わないだろう。勇聖者も相手を決めた様だ
「ええと、じゃあ一番弱そうなのを残すとして・・・、貴方の相手は僕がしましょう」
「へへ、このエルブ様を選ぶか。死ぬ前に祈りを先に済ませたらどうだ坊さん」
「それはいいですね。あ、一番近くの教会はどちらになるかお聞きしても?」
「直線距離で15キロ南にあるかな。逝くかい? 名前を聞いておこうか」
「ジョルジュ・バルディですが、これでおいそれと死ねなくなりました。少し頑張ってお相手させていただきますよ」
さて、私の相手はこの残り物か
「勇者
「よかろう、このリーンが相手になる…」
「ほう、そう言う名前なのか。ちなみにあの最弱はなんと言うのだ?」
「ハッ、名前を聞いて墓でも作ってやるつもりか? 弱肉強食を旨とする魔族の敗者に墓などを作るとでも」
「それもそうだな」
やはりこいつらの名に聞き覚えは無いなと思っていると、この残り物は私と目が合うなり不機嫌そうに表情を歪めた
「貴様、あの剣士にバルトと呼ばれていたな。それが貴様の名か」
「そだが、それが?」
「その名前…、先代魔王様と同じ。気に食わん!」
「そうか・・・。フッ」
「何が可笑しい!!」
「いやな、その先代様もそこまで慕われさぞ嬉しかろうとな」
本人を前にして気づかぬ程度の愚物のくせに。演説中の様に気配を絶たず垂れ流しにしていないと分からんのか? それどころか余の殺気に怖気づき顔をあげられず顔も見た事も無いのではないか? その忠誠、
「そんなに笑いたければ笑い易い様に横一文字に切り裂いてくれる!!」
私の笑みが気に食わなかったようで、この残り物は槍を横薙ぎに振って来た
「おっと」
私の口元を狙ったその遅い槍を一歩引いて躱してやると、動じる事もなく素早い突きを放って来た
「一撃目は様子見か? 悠長な事だな残り物」
「シュン!」
その突きも半身になって躱し、続いて来る三連突きを躱し
「シュシュン、シュン!」
次に来る槍先による突き…に見せかけたフェイントからくる石突きによる足払いを躱して
「ブぅッッ!」
「ガッ!」
その下段に来た槍を踏んで止め、そのまま上に駆け上がって残り物の顎先を蹴飛ばしてやった
「ガン!」
「くッ! 格闘家か!?」
ヤツは蹴られて危険を察し間合いを取ったが危険を把握しきれてはないない様だな、闘志は消えていない
「貴様相手には武器も魔法も使うまでも無いだけだ。さっさと来い」
このまま適当に最弱の相手をしながら他の者の戦いを見物しているかな。そういえば闇落ち妖精が戻ってこないがどこに行ったのだ?
「ふん♪ふん♪ふん♪」
闇落ち妖精は最弱の眼球を抉り出しボール遊びをしていた。ヤツの事はもういい、勇者の様子は・・・
「せい!」>ガキン!<「りゃあぁ!」
勇者はゲッテムと互いの大剣を合わせ
「きぃッ!」
だが魔力で筋力を上げられるゲッテムに押し切られそうになっている、戦闘スキルの無い勇者は不利な状況だ。合わせた剣から勢いよく火花が上がる
「ギイイイィィ!!」
「くッ、そぉい!!」
勇者は剣の切っ先が自身に届く前に、からめる様にして受け流し大きな鍔で受け止め、逆に相手の首元に自分の剣の切先を当てた
「コッ」
しかし不十分な斬撃ゆえ、ゲッテムの首を切り裂くまでには至らなかった
「硬って首だな! こり過ぎなんじゃないかぁ!」
「貴様こそ、我が剣の切先を避けたまでは見事だが貧弱! 鍛練不足ではないかなぁ!」
だからこそ貴様に勇者の練習相手になっているのだがと私が思っていると、今度はゲッテムが勇者の剣を絡め、己が剣の切先で勇者の兜を削り取った
「ギイィィン!」
「っとと!」
勇者は直ぐにバインドを解き間合いを取って剣を構え直してぼやいた
「やっぱ安物じゃダメかよ」
「なら外したらどうだ、視界が狭まるだけだろう」
「ぬかせ、直撃させなきゃ良いだけの話だろうが」
勇者の判断は正しい。もし兜が無ければ削り取られていたのは勇者の頭の方だろう。勇聖者の方はどうかな?
「そい」
「ゴンッ」
勇聖者が振るったメイスが空振りし地面を叩き、エルブは余裕を見せ
「ふふ、遅いねぇ~!!」
エルブのは両手に持ったナイフで勇聖者に襲い掛かり、勇聖者は持ち上げたメイスの柄でナイフを防いだが・・・
「キィン」
「グシャ!」
・・・もう片方のナイフは勇聖者の腹に刺さり煙を出す。その煙を見て勇聖者は静かに呟いた
「呪詛のナイフですか」
「ああそうさ!俺の呪詛で作り上げたナイフさ。そして・・・」
相変わらずクルクルと勇聖者の周りを回りながら、エルブは手に複数のナイフを具現化させて高笑いを上げる言い放った
「・・・呪詛のナイフはいくらでも出せる! さあ全身を呪詛で侵されながら死にな!ハリネズミになってよお!!」
エルブは勇聖者全身に数十本ナイフを一瞬で突き刺してみせた、いずれも急所だ。勝利を確信したエルブはひと息ついた
「ふう、素早さが取り柄の俺とは相性が悪かったな」
「確かに相性が悪いようですね、貴方が」
「なに!?」
刺さったナイフも初めに受けたのを省いて、煙を上げながら地面に落ちていく。勇聖者は何事も無いようにエルブに話し掛けていた
「初め受けた時は判断が遅れましたが、特性が分かればなんてことないですね。呪詛で出来たナイフなら身体に受けた瞬間に浄化してしまえば良い」
地面に落ちたナイフから煙が引き、露わになったそのナイフ刀身は溶けてなくなっていた。勇聖者は残った一本のナイフを腹から引き抜いてこうエルブに言い放つ
「アナタの先ほどの数十回の攻撃で僕にあたえた傷は、この1センチ程の刺し傷だけですよ」
抜いたナイフもやはり刀身が解けていて、そのナイフは勇聖者に握りしめられ完全に
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