第9話 謎

 彼女が初めて能登に手を振った日から、1週間が経った。


 1週間が経ったことで、手を振る彼女に対して分かったことがある。その法則に気づいたのは、次の雨の日だ。


 彼女は晴れの日には手を振り、雨に日には手を振らない。


 しかし、それが何を意味するのかはまったく分からない。探偵小説でありがちな〝隠された暗号〟なのか、それとも〝晴れの日だけに効果のある新手のダイエット法〟なのか。


 ただ、その事実から言えることがある。


 毎朝電車に乗っている能登に対して、彼女が手を振っているわけではないということだ。


 しかし、能登にとって、そんな事実は無意味だとも言える。彼女が手を振ってくれるだけで、能登は気分がいいのだから。

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