第8話 筋肉痛
門前での騒動は衛士の人たちから注意喚起を受けただけで終わった。
冒険者組合では成り行きとはいえ、まさか薬草採取の依頼でトレント討伐してくるとは思っていなかったと見えて、組合入り口に置いたトレントを見て一時呆然としていた。
また換金しようにもトレントまるごとでは木材商に掛け合ってみないと値段が決められないと言われて薬草採取の報酬だけを貰ってトレント討伐に関する報酬は後日に支払われることになった。
以上が昨日のことである。
そして今日俺は何をしているのかというと
「い、いでででで‥‥‥動けん。」
筋肉痛で動けないため宿のベッドで治療中である。なんでこんな状態になっているのかというと昨日のトレントとの戦闘で使ったルーン文字が原因なのだ。
そもそもルーン文字という魔法文字は基本的に武器や防具、または日用品などの物にルーン文字と呼ばれる文字を彫り、そこに使用者が魔力を送ることで効力を発揮する魔法文字なのだが、例外としてドヴェルグだけは言葉として発することでルーン文字の力を行使できるという能力を神々から与えられており、昨日俺が口にした文言もルーン文字を発動させるために必要な行動なのである。
しかし、昨日のような効力を発揮したルーン文字は彫ったもののように限定的な力を与えるだけとは異なり使用者に莫大な力を与える反面、使用後に何らかの反動がくるものであり、今俺の全身を苛んでいるこの筋肉痛も反動によるものなのである。
「だから使いたくなかったんだよなぁ。」
少しばかり昨日の行動を後悔していると部屋の扉からトントンというノック音と共に「トルゲさん、お客さんが来とるけど?」と宿屋の親父さんの声が聞こえてきた。
「わかりました。今行きまーす。」
筋肉痛は辛いけどお客さんが来てるからと我慢して俺は1階に降りていった。
そう言えばお客さんって誰だろうね?
◇◇◇
降りてみると宿屋の受付近くにキンバリーさんがいた。
「ああ、お客さんってキンバリーさんのことですか。」
「ええ、昨日の件で冒険者組合として話したいことがあったのだけど中々来ないからこちらから訪ねることにしたんです。」
昨日の件というとゴッツの親方のとことだろうか、それともトレントのことだろうか。もしくはその両方か。
いずれにしても聞く必要はあるだろう。
「それで昨日の件とは?トレントのことですか?」
「それではなく、トルゲさんが怪しんでいたゴッツ・ゼネジー氏の依頼についてです。」
「なにかわかったんですか?」
ゴッツの親方が冒険者組合に出していた鍛治協力依頼は素人の俺から見ても違和感のある、というかクビにされた俺からしたら何で?と思えるような依頼だった。
「組合が調べた所によりますと」
そう言ってキンバリーさんは話し始めた。
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