第6話 依頼
さて、どんな依頼を請けようか。
冒険者組合についていろいろ受付から聞いた後、俺は冒険者として依頼を請けることにした。
とはいえ、組合の壁に設置されている依頼ボードから自分の実力に見合った依頼を見繕うというのはさすがに冒険者になったばかりの俺には難易度が高すぎるので受付で今の自分が請けられそうな依頼をいくつか見繕ってもらった。
「こちらの依頼でしたらいかがでしょうか。」
冒険者証受け取りに引き続いて対応してくれている受付の女性(キンバリーという名前だそうだ)がそう言っていくつかの依頼を見繕ってくれた。
キンバリーさんが見繕ってくれた依頼はそれぞれ薬草採取、ゴブリン退治、鍛治協力依頼の三つだった。
俺は一も二もなく三つ目を選んだよ。
だって、俺の主目的は鍛治をすることであって、冒険者稼業はそれを支えるためになったのだから依頼に鍛治があるならそれを優先に請けるのはなにも間違ったことじゃないはずだ。
と、そんなことはさておいて依頼内容の確認だ。
一応キンバリーさんが内容を読んでくれたけど間違いがないか確認は必要だ。
ということで依頼内容を読んで間違いがないことを確認していたところ依頼人の欄で予想していなかった人物の名を見て固まってしまった。
「依頼人ゴッツ・ゼネジー?」
そう、何を隠そう俺を昨日何の前触れもなく突然クビにしやがったあのゴッツの親方の名前が書かれていたのだ。
「何か不備がございましたか?」
俺が突然硬直してしまったのを見て依頼内容に何か不備があったのかとキンバリーさんが声を掛けてくれた。
「いえ、この依頼人なのですが。」
「ゼネジー様ですか?この方が何か?」
「はい、このゴッツ・ゼネジーという人物についてですが.....」
俺は昨日のことを今日会ったばかりのキンバリーさんに話して良いものかどうか迷ったが昨日工房を畳むと言って俺をクビにした人が次の日に鍛治協力依頼を、しかも畑違いであるはずの冒険者に依頼するといういろいろよくわからない行動をとっているということに何か裏があるのではないかと思い話すことにした。
「そんなことが‥‥‥」
キンバリーさんも俺が抱いている疑心に同意してくれたようで眉間に皺を寄せて思案顔をしていた。
「一旦この依頼は取り下げてこちらで詳しく調べてみます。」
キンバリーさんはじっと見つめていた依頼書から目を離すと真面目な表情で言った。
◇◇◇
鍛治協力依頼は取り止めになったので代わりに一番目の薬草採取依頼を請けることになった。
そんなわけで今俺は街の外にある森の中で目当ての薬草を探している最中である。
「ないな~。」
薬草についての知識なんて前世を含めても何もなかったので組合に併設されていた図書館で目当ての薬草のイラストや特徴、生息地などを調べたけど実際に探してみると一向に見つからないものだね。
異世界産の植物だからか全体的に青く、赤い葉脈が特徴だと書いてあってのですぐに見つけられると思っていたんだけど。
「もう少し奥に行ってみるか。」
今探している場所は森の中でも比較的浅い場所なので薬草が採り尽くされてしまったのかもしれない。
なら、もう少し奥の方で探してみるべきだろう。
そう思い俺は森の中を奥へと進んでいった。
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