第4話 転生してから3年

 転生してから3年が経ち、俺も15歳になった。15歳という年齢はこの世界で成人に認定される歳であり、つまりは俺は大人になったということである。

 そんな大人になった俺は今何をしているのかというと‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「ゴッツの親方ァ!青銅剣20本鋳造終わりましたぁ!」


「うるせぇ!そこに置いとけぇ!」


 ゴッツの親方(本名はゴッツ・ゼネジー)の下で鍛治の修行中である。

 ゴッツの親方は俺と同じドヴェルグなのだが、そのドヴェルグの中でも一、二を争うほどの鍛治師として知られて‥‥‥‥いないが、腕の良い鍛治師としてはそこそこ知られている人物であると親父からは聞いている。


「それで親方、俺に用事って何です?」


 仕事が一段落して暇ができたので今朝親方から告げられた用事について詳しい内容を聞くことにした。


「ああ、そのことなんだがな‥‥‥‥‥」


「親方にしては歯切れが悪いっすね。」


 親方はいつもなら怒鳴り返してくる俺の軽口に何も言わないまま、手元の酒を一気に飲み干した後ひとつ息を吐くと言った。


「すまん!ウチで雇えなくなった!」




 は?

 雇えなくなった?

 誰を?

 親方の工房には親方と俺しか働いていないし‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「って、俺か!?」


「本当にすまん。」


「いや、何で‥‥」


「それがなぁ、工房の御得意さんが不渡り出して潰れちまってさぁ。そのせいで俺んとこも苦しくなってよぉ。今月分の給金でもキツキツなんだわ。」


「でも、さっきだって青銅剣20本鋳造してたじゃないっすか!」


「それでも雇えねぇもんは雇えねぇんだ。だから明日から来なくて良いぞ。」


 そう言って話を切り上げたゴッツの親方は俺を工房から追い出した。


◇◇◇


 次の日


 「は~、これからどうするか。」


 昨日親方からクビを言い渡された俺はこれからどのように生きていけば良いのか悩んでいた。

 故郷のアイリヒに戻っても良いが親父に鍛治師になると言って出ていった手前、クビなって帰ってきましたじゃあ会わす顔がない。

 それに昨日親方からそれまで働いた分の給金を払って貰ったとはいえ村に帰るには余りにも心もとない金額であり、蓄えていた貯金を加えても余裕はないだろう。


「それに鍛治師を諦められないしな。」


 そう、ドヴェルグとして転生したのだからできることなら鍛治師として大成できなくとも鍛治師として一人前として世間から認められるくらいにはなりたいと思っていたのだ。

 そのためには鍛治師に師事して教えてもらうのが定石なのだが親方からクビを言い渡された俺にはその方法は出来なくなった。他の工房で働くという手も無くはないが紹介状がなければ門前払いされるだけなのが目に見えている。

 であるならば、俺に残された手段はひとつ。

 鍛治をしながら他の仕事もするしかない。


「それができる職業は‥‥‥」


 ふと通りに面している建物目を向けると何かのモンスターとおぼしき生き物とそれを貫いている剣の絵が描かれた看板が目についた。

 それは冒険者組合の看板だった。


 これだ!!

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