柔い
@QE33567
第1話 プロローグ
嗅覚の記憶は鮮明で、深く人の心に残るという。
子供の頃、幼稚園のおやつの時間に嗅いだカステラの匂い。田舎のおじいちゃんの家に行ったとき、地面に寝転がったときの草の薫り。家族旅行で海に行き、磯の香りとともに吸い込んだ焼きそばの風味。嗅覚は、その時々の喜怒哀楽の感情と深く結びついて、人々の記憶に刻み込まれている。
僕が覚えている中でとりわけ鮮明な嗅覚の記憶は、佳澄の髪から匂ったシャンプーの香りだ。付き合い始めて3回目のデート、丁度クリスマスの夜だった。身体の関係までは早いと思いつつ、せめてキスはすましたかった。
どこか雰囲気の良い場所で……。
おそらくその思いは、佳澄にもあったのだろう。クリスマス当日、二人で練ったデートプランをひとつずつ楽しみながら、その時はやってきた。
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