第9話 独創性

 作家を目指す上での年齢は若い方がいいのかもしれません。

 ですが私は、何歳でもいいと思っています。


 五年前の芥川賞を受賞された黒田夏子さんは当時75歳。

 受賞された作品がデビュー作(数十年前に一度、小説賞で入選はした事がある)なので75歳の新人さんです。


 その歳まで素人として書き続けるのは大変だったと思います。

 でも書き続けていたからこそ、受賞できたわけですし黒田さんの作品に出会えて喜んでいる読者もいるはずです。


 黒田さんの受賞時の有名な言葉が

「生きているうちに見つけてくださってありがとうございました」です。


 黒田さんの作品は、芥川賞受賞作品の中でも独特で私もあまり入り込めません。

 私はよく、芥川賞作品の事を「ブルーチーズ」と表現する事があります。


 ブルーチーズって独特ですよね。

 好きな人は凄く好きだけど、その美味しさが分からない人には苦手な人もいる。

 ちょっと両極端の嗜好品。

 黒田さんの作品はそれ以上なのです。


 だけど黒田さんはその作風のまま75歳までこられた。

 そしてデビューした。


 極端な例なのかもしれません。

 ですが私は、作者に自身の書きたいものがあるなら、年齢も万人ウケも無視して書き続けてもいいのではないかと思っているのです。


 私は書く人間である前に小説、物語が大好きなイチ読者です。

 その読者の立場から、本当に面白い作品に出会うためには作者さんに自分の書きたいものを貫いてほしいと思うのです。

 そして歳を理由に、書くのをやめて欲しくないのです。


 黒田さんの「abさんご」が大好きな方は、万人ウケしなくても、そのままの黒田さん、他にはない黒田さんの作品が好きなんだと思います。


 多くの人に受け入れられる作品も求められますが、多く小説を読んできた人たちこそ更なる面白い独創的なものを待ち望んでいる場合があると思うのです。

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