第2話 幼稚園

「皆さんこんにちは自分です」

「今回は自分の赤ちゃん〜幼稚園頃の話をしたいと思います」

「それでは始まります楽しんでいってください」



自分は平均的な体重で生まれたという。

その頃の記憶は当然ないが後々母から聞く話によると、本当に普通の子供だったという。

歩き始めるのも1歳前後だったし食事なども他の子と違いがない物を食べていたらしい。

そんな自分も後から考えてみると少し特別だったのかも、しれないことがある。

それは同じ病院で同じ日に生まれ、家も隣どうしの幼馴染がいることだ。

その子の名前は悠見雪花ゆうみ ゆきか親どうしもとても仲が良く、よく一緒に遊びに出かけてたらしい。

それから雪花とは同じ幼稚園に入園した。

幼稚園の頃の記憶もほとんどないのだが、1つだけずっと覚えていることがある。

それは、幼稚園の遠足で山登りをしに行った日のこと、この頃の雪花は寂しがり屋で照れ屋だった。

その頃の自分はそんな雪花を守れる勇者になりたいと心の底から思っていた。

恋心とは違う何かを。

そして山登りをしてる最中に事件は起こった。

いつもどおり雪花は自分の後ろを、ぴったり付いてきながら小声で話しかけてきた。

「ねぇお願いがあるんだけど」

「何?」

と優しく聞き返した。

「先生に後どのくらいで着くのか聞いてきてくれない?」

と少し頬赤らめながら聞いてきた。

「自分も一緒に聞きに行くから、ね聞きに行こ」

といつものように優しく聞くと

「うん!」

満面の笑みで返事をしてくれた。

先生がいる方向へ手を繋いで、歩き始めた。

歩いてる最中雪花が、坂の方向に足を滑らせそのままの勢いで、坂を下って行ってしまう。

手を繋いだままだった自分も雪花と、同じルートで下って行ってしまった。



「ここどこ?」

と眼を擦りながらゆっくり体を起こした。

辺りは真っ暗でなんだか肌寒い。

ああそうだ自分雪花と手を繋いだまま坂を下って。

って雪花はどこだ大丈夫か? と慌てながら辺りを探して見ると、隣に雪花はいた。

「はー良かった居て。おーい雪花起きてー」

と呼びかける。すると

「うーんおはよう。ここどこ?」

雪花は辺りを見回す。驚いた表情と少し涙を垂らしながら。

「真っ暗、みんなどこ? お母さんどこー」

遂には号泣し始めた

「大丈夫自分がいるから、明日になればきっと迎えに来てくれるよ。きっと大丈夫」

雪花の肩をトントンと叩きながら、泣き止むのを待った。

泣き止んで、少し雑談をしているとやっぱり寒いことに気づく。

雪花の方を見ると体が震えている。

自分の着ていたパーカーをそっと雪花に被せる。

雪花は心配そうな顔でこっち見て。

「パーカーあなたはいいの?」

笑顔で頷いた。

雪花はそれでも。

「ダメだよあなたも凍えちゃう。そうだ!」

そう言った雪花は体をくっつけてくる。

「これで一緒に暖っめるよね」

満面の笑みでそう言われると断ろうにも断れず、そのまま日が昇るのを待った。


日が昇り始めてすぐぐらいに人影が見えた。

自分と雪花の親だった。

親は自分たちを見つけると、勢いよく走ってきた。眼には涙が溢れていた。

この日の事は一生忘れない思いでになるとこの時気付いた。なぜなら雪花を初めてちゃんと守れた日だからだ。



「皆さんどうでした? 平凡な自分が初めて、彼女を守れた話」

「次話は小学生になった自分と彼女の話です。」

「小学生になるとやはり男女でいるといじられたりしますよね? それでも自分は彼女を守りたいと思えるのか、それとも――」

「それでは次の話でお会いしましょうさようならー」

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