【第一部】第五章「転機」
三ヶ月くらいした頃だろうか。あけちゃんと連絡を取る回数が増えて、俺の心の中心に彼女に対する気持ちが、とても大きなものに変化していた。恋愛と無縁だった俺も、少しは前進できたのだろうかと思っていた。
すっかり、周りの景色は残暑を終え、秋の訪れを感じ始めるとき、健がボソッと言った。
「……のそ、お前、あけちゃんと会って何度目?」
「お、お互いに忙しくて、なかなか会えないけど……んー、コーヒーとか飲んでるのも合わせれば、結構会ってるよ」
「そうかぁ。そうかぁ」
健はなんかいろいろと考えていた。そして、驚くべき一言を言った。
「よし、お前、あけちゃんに告白しろ!」
「へ、へええ?!」
さすがに早すぎないかと、俺は驚いていた。なんせ会って半年もしていないからだ。知り切れていないこともある。知るべきこともある。知りたいことも、教えたいこともある。俺はめちゃくちゃ混乱した。
「い、いや、ちょっと早すぎない?」
「俺、上手く行くと思うんだけどなぁ……取りあえず、次会うとき、タイミングがあったら言ってみなよ」
俺は煮え切らなかった。なんか気が乗らなかった。しかし、タイミングもタイミングと言うもの。俺はあけちゃんからのメッセンジャーを貰ったのだった。
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竜之介さん、宜しかったら、今度教えていただきたいことがあるんです。
パソコンを買い替えたいので、お付き合いしていただけませんか?
ご都合のいい日程があったら教えてください。
byあけちゃん (朱本 蛍)
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話によれば、次の週末の休みの日に、あけちゃんの家のパソコンを買い替えたいそうだ。俺は家電量販店に行って話をした。うちにはモニターのパソコンが二台あり、デイトレーダーとして機能させているのだ。高機能のパソコンが常時稼働中だ。
「あけちゃんは……デスクトップ型と、ノート型、ど、どっちがいいの?」
俺は口下手ながら、説明した。まだまだ会って慣れない。あけちゃんのオーダーは、「ノートの高機能スペックで、バッテリーの持ち時間が長く、デジカメなどの外部機能がしっかりと繋げられるもの(無線などで)。そして、軽量で可愛らしいもの」という話だった。俺はメーカーを調べて、二つのメーカーのパソコンを見せた。正直あーだこーだ説明しても、うまく伝わる自信がなかったから。
「可愛いパソコンですね!どっちにしようかなぁ」
「ど、どっちも機能がいいんだけど……値段の問題だね」
あけちゃんは、その二種類のノートの「高スペック・高価格のもの」を手に取った。そして、笑顔で言った。
「これにします!」
「うん。……そっか」
「竜之介さんが選んだものなら、間違いないと思いますし」
少し恥ずかしかった。
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