【第一部】第四章「カンタと遊ぼう!」



 秋も深まる十月の季節。 少しずつ周辺も紅葉で色づき、肌寒くなってきた。


 「ボクはカンタ。主人の家に来てから、とても楽しい日が続いている。主人が最近買ってくれたお気に入りのカラカラが最近気に入っているのです。特にこの噛み心地が良い」


うっとりとするカンタ。そこにのそのそっと黒い影が。


 「新入り!お前慣れたか?だじぇ」


 「また構いに来たんですか?クロ。いや、『五六文(ごろふみ)』さん」


 「シー。主人に内緒にしてるんだじぇ。この場所に来てから既に十年。おれっちも猫又であることを隠して生活してるんだじぇ」


 『主人』はパソコンの前で動画に夢中になっていた様子。クロは甘えるようにして、主人の足に擦り寄り、そのまま腿の上に抱き上げられ、載せられた。


 「全く、クロは可愛いなぁー」


 「それほどでも(主人にはにゃーと聞こえている)」




 カンタは少し嫉妬しながら、ゲージからピーチクパーチク訴えた。


 「あ、ずるいです!!自由に動ける身分だからって!僕も主人に甘えたいっ!!(主人にはピチュピチュとか聞こえている)」


 「ん?カンタ?どうした?出たいのか?」


 主人はゲージを開けると優しくカンタを掴んでそのまま肩に乗せた。クロは下から見上げながら、苦い顔をしている。


 「くっ、主人め、カンタを出したか。仕方ない。おれっちはママさんの所へいくじぇ」


そう言うとクロは悔しそうに鳴きながらドアの隙間からするりと抜け、階段を下りて行った。


 「ふぅー、クロは慣れないです。今でもあのゲージを揺らされた恐怖と言ったら」




 実は、連れてきて少し経った後、クロは興味本位でカンタの入っているゲージを揺らしたのだ。襲うことは無かったが、少しトラウマになっている。「ピギョー!」と言う鳴き声で犬司は少し驚いた。しかし、少しずつ猫(又)とオカメインコの距離は縮まっている。




 引き続き、主人はオカメインコの動画を見ていた。


 「ふむふむ。これは僕の仲間ではないですか。どれ」


パソコンのキーボードの前に飛び乗ると、画面の前でカンタはステップを踏みながら画面に映るインコに動きを合わせていた。


 「あー、カンタっ!見えないからやめろっ!」


 主人は笑いをこらえながら、カンタに対して言っている。カンタは振り返って首をかしげたが、引き続きステップを踏んでダンスをしていた。


 「あ、このインコめ、もしや『ピーチ』ではありませんか!」


 嬉しそうに鳴くカンタ。


 「ん?カンタ、『ピーチ』に会いたいのか?でも、また今度な」


 主人はカンタを撫でる。嬉しそうにカンタも頭を預ける。


 「さて、少し餌をやるか」


シードをシャカシャカ振る主人。その音にカンタも首を振り振り楽しそう。


 「カンタ、この音が好きなのか?」


 「主人、それは僕の好きなゴハンですね!今日はシマシマの(ヒマワリの種)多めでお願いします!」


 「カンター、分かってるぞー。でも、ヒマワリは太るからダメな。代わりにこれやる」


 主人は緑色の葉っぱをひらひらさせてカンタに見せた。カンタはきょとんとし、首をかしげている。


 「ん?小松菜好きじゃないのか?」


 「なんですか?そのひらひらは。えい、かぶりついてみましょう」


 カンタは主人の手にとてとて歩いて近寄ると、がぶりとくちばしで小松菜をむしった。


 「ふむぅ、この青臭さ。悪くないですね」


 「お、気に入ってくれたか!よしよし」




**


 「少し、日中のぽかぽかにうとうとしてきました」


 カンタは窓際の日当たりの良い所にゲージを置かれてうとうと。止まり木から落ちそうな感じで揺れている。羽を膨らませて目を閉じている。


 「でも、僕はやっぱりこっちが好き」


 カンタはのそのそとヒーターの位置に来ると、寝言のように鳴きながら寝てしまった。




**


 「カンタ、ただいま」


 「おかえりなさいませ。主人」


 「わり、ミサキチとの話が長引いちゃってな」


 「とんでもないです。私も今日はゆっくりと過ごさせていただきました」


 「少し出るか?」


 そう言って主人はカンタを取り出すと手に乗せて撫で始める。気持ちよさそうにカンタはくつろいでいる。


 「やっぱり私はこの家に来てよかったです。大好きな主人とご、ごろふみ……と」


 カンタはご機嫌になって歌い出した。


 「きゅきゅきゅぴー、きょろろー!」


 「お、カンタ新しい歌、覚えたのか?」


 「どんなもんですか?伊達に主人の見てる動画の歌のマネはしてないですよ!」


 カンタはふんと鼻を鳴らした。

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