失無症
いくま
①
12月31日、大晦日。1年が終わり、新しい年を迎える慌ただしい時期。
僕たちはまだ19歳。法律が改正されて成人式は20歳になる年の元日に行われるようになった。
20歳になると一つ失うからだ。
例えば、僕の姉は眼帯をしている。右目を失ったから。両目を失い、失明してしまう人もいるから姉はまだ失明しなかっただけよかったのだろう。
突然変異というのは名前の通り突然起こる。僕の姉の世代からだろうか。20歳になった日の夜、突然声が出なくなった女性のニュースが話題となった。そのニュースが報道されてから毎日毎日、片腕を失った、耳が聞こえなくなった、目が見えなくなったなどのニュースが絶えなかった。そして、それは全て成人式を終えたばかりの男女に限られていた。だから、姉の世代から下。僕たちの世代は20歳になると何か一つ失う。それは体の一部か、はたまた目にはわからないものなのか。最近ではそれを失無症と呼ぶらしい。
僕たちの世代の成人式は明日行われる。1月1日。そして、僕の誕生日はその丁度一年後。
僕は何を失うのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます