幕間 ー 朝凪救助日記
今日、荼枳尼様のお使いで買い物に行ったんす。
最近、インターネットでのお買い物を覚えた荼枳尼様は、楽しそうにいろんな物を注文してるんす。
おかげでお使いの回数は減ったんすが、新宿近辺で買えるスイーツは頼まれるんす。
総司さんも泰山娘娘様用のスイーツを購入しているって聞いたっすから、スイーツの買い出しは男の務めなんすね。
それで、お目当てのお店が入っているビルの前に人だかりができていたんす。
近づいてみると、お目当てのビルじゃなく、隣のマンションの屋上をみんな見ていたんす。
見上げると、人の姿があったんすよ。どうやら飛び降りしようとしているみたいだったんす。
視力がアップする朝凪アイを使って、よくよく見たら女性だったんす。
それも巨乳じゃない若い女性。推定年齢二十代後半くらいっすね。
巨乳女性でも、ダーク
能力が判るというスカウターだったか……そんな眼鏡が欲しいところっす。
まぁ、とにかく、巨乳じゃない女性は朝凪ワールドでは宝っすから、助けなければならないんすよ。
朝凪式空歩術……風香さんに言わせると、空歩術(チェリーボーイレベル)を使う時が来たんす。
同時に、朝凪式幻術……風香さん曰く、単に幽状態のあやかしを使用すれば人間には見えないっす。
幽状態になって、五分しか使えない……いや、違うっす、五分まで使えるようになった空歩術を使ったっす。
五分間全力で飛べば、屋上の女性を助けられるっす。
姿消して、勢いよく飛び上がったんすよ。
そして、ビルの下を震えながら見ていた女性を掴まえて、そのまま神渡ビルの屋上まで飛んだんす。
……五分ギリギリで、正直ビビってたんすが、間に合って良かったっす。
掴まえた瞬間に女性の姿も人間には見えなくなるから、野次馬はびっくりしたと思うんす。
でも、女性を助けるためだから仕方ないっすよね。
神渡ビルに降りたとき、助けた女性は何が起きたのか判らずビックリしていたっす。
本当のことは言えないっすから、「特殊部隊の機密っす。だから詳しいことは教えられないっす」と誤魔化したんす。
……特殊部隊、憧れなんすよ。
「どうして助けたんですか! 私は、私はもう死ぬしかないんです!」
その女性は、床に座り込んで泣き出して騒ぎ出したんす。
参ったと思ったんすが、でも、巨乳じゃない女性は宝っすから、肩に手を置いて言ったんす。
「話を聞かせて下さいっす。力になれるかもしれないっすから」
ちょっと格好つけてみたんす。たまにはいいっすよね。
女性は、立花さおりさんで三十歳と言ったっす。
……もうすぐ三百歳になるこの朝凪に比べたらまだまだお子ちゃまっすね。
ホストクラブにはまって、借金たくさん作ったそうっす。
……自業自得っすね。
額は四百万くらいらしいっすが、風俗でいくら稼いでも全然減らないらしいんす。
……よっぽどタチの悪い業者から借りたようっすね。
それで死んで保険で返せと言われたらしいんす。
……ちっと酷いっすね。
毎日のように借金取りに責められて、もう死ぬしかないと思ったらしいんす。
「借金返せても、またホストクラブに通うんじゃないんすか?」
「判ってるんです。このままじゃいけないって。でも、どうしてもやめられないんです」
うーん、何かの病気っすかね?
そう思っていたところに荼枳尼様がいらっしたんっす。
いつも見目麗しいお姿にブリリアント
この朝凪のいつもと違う気配を感じて、来てくれたらしいんす。
……一生ついていくっす。
「坊や、その
事情を説明したら、立花さんの額に手をあてて「憑かれてるわね」と言ったんす。
そしてそのまま一分ほど立花さんの頬に両手をあてていたんす。
立花さんも荼枳尼様のお美しさに見惚れていたのか、キョトンとしていたっす。
そして「これでいいわ」と荼枳尼様が微笑んだんす。
「
どうやら変な霊に憑かれていたから、判っていてもホストクラブ通いを止められなかったようっす。
「借金は、この朝凪が肩代わりしてもいいっすよ。利息なんてとらないっすから、毎月少しずつ返してくれればいいっす。どうすか? もう一度、生きて頑張ろうと思えるっすか?」
巨乳じゃない女性は宝っすからね。
この朝凪が観たところ、ブリリアント
それに、お金は持っているんす。
神渡ビルで働いて暮らしていると滅多に使わないから貯金いっぱいなんすよ。
荼枳尼様の
「大変だからねぇ」と、とても優しい笑顔で玖音さまが増やしてくれたんす。
ビルで食事すると、みんな「お疲れさん」と奢ってくれるんす。
総司さんや葉風さんは、「欲しい物があったら遠慮するなよ」と身の回りの物何でも買ってくれたっす。
あの風香さんですら、お小遣いくれるんすよ?
……荼枳尼様の
でも、貰えるなら貰っておくっす。
だから四百万くらいなんてことないんす。
「どうして、こんな私に?」
立花さんはそう言ったっす。
だから、ニカッと白い歯を見せて笑い、サムズアップして言ったんす。
「巨乳じゃない女性は世界の宝っすから!」
何故か笑われたんすが、どうしてっすかね?
精一杯格好のいいこと言ったつもりなんすよ?
その後、いろいろ話し合って、毎月少しずつ返してくれることになったんす。
あとは、借金取りと話をつけるだけっす。
で、どこから借りたのか聞いたんすよ。
そしたら、聞いた名前の消費者金融だったんす。
……あ、総司さんが解決したトラブルで聞いた名前っす。
早速、総司さんにお願いしたんす。
「ああ、田坂のところか。いいぜ。電話一本で済むから……」
何を話したのか判らないんすけど、スマホを耳にあててる総司さんは悪い顔していたっすよ。とても楽しそうだったんす。
そしたら、返済額も半分になったんす。さすがは総司さんっすね。
立花さんと二人で二百万になった借金を返しにいったんす。
お金を返すと、黒服のお兄ちゃんが「これであんたとは無関係だ」と立花さんに言ったっす。
・・・・・
・・・
・
「朝凪、あの程度のことならいつでも言ってくれよ? ほんとに、ほんとーに言ってくれよ? な?」
後ろ手観音、
よく判らないっすけど、一人の女性を助けられたっす。
満足っす!
これからも、この朝凪はやるっすよぉー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます