第35話 救出

○×公民館にとかげやとんぼのお客様がいらっしゃったことは以前、紹介しました。

迷いこんだお客様は本来の場所にお帰りいただきたい。

それは、市民の方も同じようで、ご協力いただくこともあります。


今回は黒い蝶々さん。高い脚立でもぎりぎり届くか届かないかくらいの窓辺で飛んでいます。

「あそこにいたら、えさもないから死んじゃうなあ……脚立があればなあ……」

歩いていると、市民の方が唸っていました。

「脚立ですか……」

そんなわけで脚立を倉庫から出しました。案の定、届かない。

「あともうちょっとなんだけど……」

そう言って、市民の方はひょいと脚立から窓辺に上がり、黒い蝶々さんを逃がしてくれました。

「よかったよかった」

と言って、わかれたきり、あの市民の方とは会っていません。

元気かな……


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