漂流する天使譚

ほがり 仰夜

はじまり

「吟遊詩人が歌っていたような。各地の母が子をあやすためにその言葉を紡いだような」

我々が天使について語れることは、お伽噺の中の姿ばかりだ。

天使はかつていたという。街を散歩したり、パンを齧ったり、テラスに腰かけたりして暮らしていたという。

天使を知っていたはずなのになあ。語るほどに薄れていく。形作るほどに遠くなる。

天使ってなんだったかな。覚えはないんだけれども、たしかに、いる。

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