第12話 「SNSについてです」
「ファンアカウントというのはですね、芸能人や有名人のファンの方々のアカウントなんです」
「名のとおりですね」
「はい、その有名人のSNSを拡散したり、ライブに行ったり、ブログやファンクラブなどから情報を得てテレビ出演やトレーラー動画などの芸能活動を世間に二次発信したり、感想を言い合ったりするんです」
「つまり熱心な方々、ということで良いんでしょうか」
「そうですね。今回は数枚、雑誌に載っただけの祐太郎さんの写真が拡散力のあるユーザーによって広まり、今ネットでは謎の美青年として話題になってます」
「ネットってすごいんですねぇ……」
なんだか他人事のようにしみじみとしてしまった。若干浦島太郎気分ではある。
芸能関係者というのは、昔ながらのようにスカウトや名のある会社のオーディションなどで発信されて芸能界に進出していくものだという認識があった。
しかし近年では、今回のように発言力のあるユーザーにより好意的な投稿がされてそれが『バズる』ことにより有名となることがままあるようだ。他にも例はあるだろうが、ここでは割愛。
近い見本を一つだけ挙げるとすると、最近は企業もSNS担当者をつけており、商品を使用した『映える』写真の投稿、宣伝、プレゼント企画なんかもしている。一方的な広告だけではなく、ユーザーにより近い発信を行っているということなのだろうか。生の声がより届きやすいという利点もあるのだろう。
人々の生活に密着したものであり、企業も利用しているだけあってSNSというのは広告効果も抜群なのである。バズるというのは良くも悪くも、社会現象となる事があるものなのだ。
神木グループでもメーカーごとに公式のアカウントがあるはずだ。
詳しい人間に丸投げされているので俺は把握していないのだが。
そういえば前世の親友はネットでの発信がすこぶる上手い奴だったのだろう。ゲーム実況者としてかなりの人気を得ていたようだし。
「ええ……でも時に有名になるということは怖いことでもあるんです」
「もうすでに怖いですよ。それだけ人に見られるということですから」
「ですよねぇ……話題になるのは必ずしも好意的なものではありませんから。それにモラルが守られるかというのも別問題です。……実は昔、というか前世なのですが、私がしたコスプレが話題になって……ストーカーにあったことがありまして」
「それは……大丈夫でしたか!?」
ついガタッと立ち上がって彼女の肩に手を添えてしまった。まさか、死因がそれだったりするのだろうか……!?
「あっ! はい! 心配かけてすみません! 被害とかはそんなに大したこともなくて……はやめに解決したので……でもやっぱり、よく人々に認知された立場があるのって怖いです」
「それだけ注目度が高いってことですしね。……俺も今後の活動では気を付けます」
しんみりした空気を絶ちきりたくて、「心配有り難う御座います」と明るく告げた。
「俺は将来の立場もありますし、下の名前そのままですから。神木の名に恥じない行動を心掛けます。肝に銘じておきますね」
「……私ってば、余計なお世話でしたね」
そんなことありませんよと言うと、真帆さんがふふと笑った。
「怖いことばっかり言ってすみません。でもですね、祐太郎さんのファンの方々は本当にマナーが良いんですよ!SNSでも、祐太郎さんの続報を今か今かと心待ちにしてるんです」
「それは有り難いことですね」
「ですです……! 近頃は絵師さんや写真家さんも祐太郎さんのファンだってプロフィールに明記したりしてる方がいるんです。そして素敵なイラストが多数投稿されていたりするんですよ……!」
「ほぉ……俺のですか」
もともとゲームのキャラだったのをまた現実世界でもイラストにしてくれているのか。是非見てみたいな。どんな風に描いてくれているのだろう。
「この間、MAKOTO宛にファンアートが送られてきたんですが最高だったんです……!」
「へぇ……それ良かったら見せてもらってもいいですか?」
「もちろんです!その方、可能なら祐太郎さんにも届けたいって呟いてらっしゃいましたから、是非」
真帆さんはスマホを素早く操作して、こちらに画面を渡してくれた。
「これはすごい……!」
「ですよね!!」
そこには、まるで写真や絵画のように写実的でありながら、その描き手の絵の技術や絵柄がとてつもなく洗練されていると一目でわかるイラストがあった。
撮影したあのスタジオのセットを背景にし、昼下がりの光のなかで二人が穏やかに笑いあっている絵だった。
今にも動き出しそうで、とても美しかった。
なんて理想的な二人なんだろうか?と俺は感動してしまった。
それからそのイラストを描いた人に感謝を伝えたいと思うようになった。
「真帆さん、お手数ですが俺にSNSの使い方を教えていただけませんか?」
「ふふ……もちろんですよ。難しいことはないので祐太郎さんならすぐに使いこなしてしまうと思います」
「助かります。とても感動してしまったんです。どうしても俺からお礼が言いたくて」
そう言うと真帆さんも嬉しそうに笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます